コラム
» 2019年08月14日 05時00分 公開

あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(5):「経営陣の交代・奪還劇」が招いた倒産 “反社”関与もささやかれたエステ企業の粉飾決算 (1/4)

成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある。どこにでもある普通の企業はなぜ倒産への道をたどったのだろうか。存続と倒産の分岐点になる「些細な出来事=前兆」にスポットを当て、「企業存続のための教訓」を探る。

[帝国データバンク 情報部,ITmedia]

連載「あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る」

成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある。どこにでもある普通の企業はなぜ倒産への道をたどったのだろうか。存続と倒産の分岐点になる「些細な出来事=前兆」にスポットを当て、「企業存続のための教訓」を探る。

第1回:格安旅行会社「てるみくらぶ」倒産の裏側に“キックバック依存経営”――多額の粉飾決算、社長らの詐欺

第2回:晴れの日を曇らせた着物レンタル「はれのひ」元社長の詐欺と粉飾決算――「成人の日に営業停止」の衝撃

第3回:スルガ銀と結託 “情弱”狙った「かぼちゃの馬車」運営会社の「詐欺まがいの手口」

第4回:太陽光ベンチャーを倒産に追い込んだ“制度の壁”――急成長企業の未熟さも足かせに

第5回:本記事


 1900年に創業した国内最大級の企業情報データを持つ帝国データバンク――。最大手の信用調査会社である同社は、これまで数えきれないほどの企業の破綻劇を、第一線で目撃してきた。

 金融機関やゼネコン、大手企業の破綻劇は、マスコミで大々的に報じられる。実際、2018年に発覚した、スルガ銀行によるシェアハウスの販売、サブリース事業者・スマートデイズへの不正融資問題などは、記憶にとどめている読者も多いだろう。一方、どこにでもある「普通の会社」がいかに潰れていったのかを知る機会はほとんどない。8月6日に発売された『倒産の前兆 (SB新書)』では、こうした普通の会社の栄光と凋落(ちょうらく)のストーリー、そして読者が自身に引き付けて学べる「企業存続のための教訓」を紹介している。

 帝国データバンクは同書でこう述べた。「企業倒産の現場を分析し続けて、分かったことがある。それは、成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある」。

 もちろん、成功事例を知ることは重要だ。しかし、その方法は「ヒント」になりこそすれ、実践したとしても、他社と同様にうまくいくとは限らない。なぜなら、成功とは、決まった「一つの答え」は存在せず、いろいろな条件が複合的に組み合わさったものだからだ。一方で、他社の失敗は再現性の高いものである。なぜなら、経営とは一言で言い表すなら「人・モノ・カネ」の三要素のバランスを保つことであり、このうち一要素でも、何かしらの「綻(ほころ)び」が生じれば、倒産への道をたどることになる。

 そしてそれは、業種・職種を問わずあらゆる会社に普遍的に存在するような、些細(ささい)な出来事から生まれるものなのだ。実際、倒産劇の内幕を見ていくと、「なぜあの時、気付けなかったのか」と思うような、存続と倒産の分岐点になる「些細な出来事」が必ず存在する。同書ではそうした「些細な出来事=前兆」にスポットを当てて、法則性を明らかにしている。

 本連載「あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る」では、『倒産の前兆』未収録の12のケースを取り上げ、「企業存続のための教訓」をお届けする。第5回目は某有名タレントが商品のプロデュースに関わっていたものの、経営陣が泥沼の「経営権奪い合い」を繰り広げ、粉飾決算にまで手を染め倒産したエステ企業、ビューティ・ソリューションズを取り上げたい。

――エステサロン経営 ビューティ・ソリューションズ

破産した他社からエステティックサロン事業を譲受し、増収傾向に転じさせるが、突如として、資金の借り入れ先である企業へと経営権が移行。それ以降、新経営陣と旧経営陣の間で、泥沼ともいえる経営権の奪い合いが繰り広げられ、そのなかで資金繰りが悪化していく。簿外債務や粉飾決算にも手を出していた同社は、いったいどのような経営の紆余曲折の末に、倒産に至ったのか。

phot 泥沼の権力闘争が行き着いた果ては?(写真提供:ゲッティイメージズ)

「乗っ取り」と囁かれた経営権の移行

 ビューティ・ソリューションズは、2010年4月に設立。同年6月にプラソン(11年6月破産)より約40店舗のエステサロン経営を引き継ぐ形で、営業をスタートした。

 引き継いだ店舗は、コンセプト別の店舗展開に切り替え、オーガニック化粧品を利用したリラクゼーションサロン「ハートアンドビューティリラク」、セルフ方式のネイルサロン「Self Style」、小顔専門エステサロン「Dollcia」などの屋号で運営していた。

 また、代表取締役を務める人物の主導のもと、経営の多角化にも着手。タレントのH氏プロデュースの骨盤ベルトや、人気ブロガーとコラボした自社開発化粧品など、エステ関連商品も販売していた。

 事業譲渡元のプラソンは、営業手法に問題があるとして業務停止命令を受けた経歴をもつ企業だ。

 その事業を買い取ったため、ビューティ・ソリューションズは、周辺業者から一定の警戒感を持たれている側面もあったが、14年3月期は年売上高約32億4900万円を計上。第一決算期となる11年3月期以降4期連続で黒字を維持しながら、増収傾向で推移する良好な決算内容となっていた。

 しかし、この背後では、じつは次のような手口の粉飾決算が行われていた。

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