「経営陣の交代・奪還劇」が招いた倒産 “反社”関与もささやかれたエステ企業の粉飾決算あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(5)(2/4 ページ)

» 2019年08月14日 05時00分 公開
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前受金を売り上げとして計上 偽りの「増収増益」

 通常、エステサロンにおける契約は原則として前払いであり、顧客が現金やクレジットカードで支払った金額は前受金として計上される。その後、役務提供(エステサービス提供)した際に、初めて売り上げとして計上しなければならない。

 ところがビューティ・ソリューションズは、プラソンからの事業譲受時に引き継いだ費用や過剰な販管費を抱えており、赤字が見込まれた決算期に前受金の一部を売り上げとして計上。売り上げを水増しすることで、赤字決算を回避していたのだ。

 新規顧客の獲得により事業規模が拡大していたのは事実だが、増収増益とされてきた毎期の決算内容は明らかな虚偽報告であったということだ。

 こうした事実が明らかになったのは、15年12月、自己破産を申請したビューティ・ソリューションズが裁判所に提出した資料でのこと。ことここに至るまで同社は、わずか8カ月ほどの間に、他社による「乗っ取り」から民事再生法の適用申請とその取り下げ、さらには経営権奪還といった紆余曲折をたどったのだ。

 まず、「乗っ取り」と囁かれた経営権移行が起こったのは、15年4月のこと。24日付で商業登記の役員欄が変更され、突如の代表交代に業界内がざわついた。

 商業登記上では、代表取締役を務めていたY氏が辞任し、B社の取締役副社長を兼務するH氏が代表に就任。これにより、什器類のレンタルや装飾品の販売など多様な業種の事業会社を傘下に収めるB社が、ビューティ・ソリューションズの経営に介入する形となった。

 経営権交代のきっかけとなったのは、B社から資金調達したことだ。14年11月、表向きは好調でも、実は資金繰りが厳しい状況にあったビューティ・ソリューションズは、B社から3000万円を借り入れた。その際、自社株式を担保に入れたのが仇となった。

 B社によると「担保権行使による株式取得後、4月24日に臨時株主総会を開催。同会で代表交代を承認し、登記を変更した。その後、経営の立て直しを図るべく、経営状況を確認したところ、多額の簿外債務が発覚した」という。

 新代表のH氏は、多額の債務を全額弁済することは困難であると判断して法的整理を決意し、5月12日付で東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。

 債権者集会は同月18日に開催され、(1)20億円以上の簿外債務が存在すること、(2)B社がスポンサーとなり経営再建を図ること、(3)ビューティ・ソリューションズには反社会的勢力が介入している恐れがあり、法的整理によって排除する必要があることなどが語られた。なお、反社会的勢力の介入という事項について裏づけは取られていない。

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