「経営陣の交代・奪還劇」が招いた倒産 “反社”関与もささやかれたエステ企業の粉飾決算あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(5)(3/4 ページ)

» 2019年08月14日 05時00分 公開
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経営権奪還後も修羅場が続き、ついに破産

 こうして新経営陣が民事再生法の手続きを進める一方、水面下では旧経営陣が経営権奪還に向けて動いていた。

 5月15日には、「本件における民事再生法の手続きは棄却されるべき」とする意見書を裁判所に提出する。その内容は「株式の移動は不当な手続きにより行われた。そのため、4月24日に開催された臨時取締役会は無効であり、Y氏の退任も無効である」というものだった。

 さらに、旧経営陣は実務面での主導権を握り徹底抗戦を繰り広げる。実務担当者から信頼を勝ち取れなかった新代表・H氏は、実態として支配力を持つことはできなかった。

 両陣営のにらみ合いが続くなか、約2週間後に新経営陣が音を上げ、5月26日付で弁護士を通じて裁判所に「再生手続開始申立取下許可申請書」を提出する。

 取り下げの理由としては、(1)代表取締役の地位を巡って争いがあること、(2)再生債務者代表取締役が再生債務者の資金管理及び従業員に対する指揮命令権を把握しているとは言いがたいこと、(3)再生債務者において、再生のために必要な運転資金の用意ができていないとみられること(原文要約)が述べられていた。

 この申請は同日中に認められ、法的申請は無効として扱われた。そののちに旧経営陣は経営権を奪還するが、その間も修羅場が続いた。

 まず問題となったのは、資金繰りである。乗っ取り疑惑や民事再生法の件があったことで、クレジット会社経由での資金回収が一時停止したのだ。

 クレジット会社からすれば、これだけ社内体制が混乱している状況下では、誰に回収資金を支払うべきか判断が難しい。相応の手続きが必要となるのは当然だが、これが痛手となった。店舗の賃料などの支払いができずに、債権者からの督促が殺到した。

 さらに、これまで好調と見られていた店舗経営も、実は不調であることが露呈する。集客が進まないなかリストラを進めており、15年中だけでも池袋店、天王寺店、心斎橋店の3店舗を閉鎖しているような状況だったのだ。

phot ビューティ・ソリューションズが入居していたビル

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