太陽光ベンチャーを倒産に追い込んだ“制度の壁”――急成長企業の未熟さも足かせにあなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(4)(1/3 ページ)

» 2019年08月13日 05時00分 公開
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連載「あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る」

成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある。どこにでもある普通の企業はなぜ倒産への道をたどったのだろうか。存続と倒産の分岐点になる「些細な出来事=前兆」にスポットを当て、「企業存続のための教訓」を探る。

第1回:格安旅行会社「てるみくらぶ」倒産の裏側に“キックバック依存経営”――多額の粉飾決算、社長らの詐欺

第2回:晴れの日を曇らせた着物レンタル「はれのひ」元社長の詐欺と粉飾決算――「成人の日に営業停止」の衝撃

第3回:スルガ銀と結託 “情弱”狙った「かぼちゃの馬車」運営会社の「詐欺まがいの手口」

第4回:本記事


 1900年に創業した国内最大級の企業情報データを持つ帝国データバンク――。最大手の信用調査会社である同社は、これまで数えきれないほどの企業の破綻劇を、第一線で目撃してきた。

 金融機関やゼネコン、大手企業の破綻劇は、マスコミで大々的に報じられる。実際、2018年に発覚した、スルガ銀行によるシェアハウスの販売、サブリース事業者・スマートデイズへの不正融資問題などは、記憶にとどめている読者も多いだろう。一方、どこにでもある「普通の会社」がいかに潰れていったのかを知る機会はほとんどない。8月6日に発売された『倒産の前兆 (SB新書)』では、こうした普通の会社の栄光と凋落(ちょうらく)のストーリー、そして読者が自身に引き付けて学べる「企業存続のための教訓」を紹介している。

 帝国データバンクは同書でこう述べた。「企業倒産の現場を分析し続けて、分かったことがある。それは、成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある」。

 もちろん、成功事例を知ることは重要だ。しかし、その方法は「ヒント」になりこそすれ、実践したとしても、他社と同様にうまくいくとは限らない。なぜなら、成功とは、決まった「一つの答え」は存在せず、いろいろな条件が複合的に組み合わさったものだからだ。一方で、他社の失敗は再現性の高いものである。なぜなら、経営とは一言で言い表すなら「人・モノ・カネ」の三要素のバランスを保つことであり、このうち一要素でも、何かしらの「綻(ほころ)び」が生じれば、倒産への道をたどることになる。

 そしてそれは、業種・職種を問わずあらゆる会社に普遍的に存在するような、些細(ささい)な出来事から生まれるものなのだ。実際、倒産劇の内幕を見ていくと、「なぜあの時、気付けなかったのか」と思うような、存続と倒産の分岐点になる「些細な出来事」が必ず存在する。同書ではそうした「些細な出来事=前兆」にスポットを当てて、法則性を明らかにしている。

 本連載「あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る」では、『倒産の前兆』未収録の12のケースを取り上げ、「企業存続のための教訓」をお届けする。第4回目は自然エネルギーブームが盛り上がった時期に、太陽光発電で急成長を遂げたベンチャー企業「電現ソリューション」を取り上げたい。

――太陽光発電所開発、販売 電現ソリューション

2011年の東日本大震災後、脱原発を求める声とともに自然エネルギーブームが社会的に盛り上がった。その代表格の1つである太陽光発電を旗印に、急成長を遂げたベンチャー企業が電現ソリューションだ。しかし同社は、間もなく資金繰りがひっぱくし、事業継続が困難となった。前途洋々と見えた直後の転落劇には、どんな背景があったのか。

phot 電現ソリューションが入居していたビル(帝国データバンク提供)

地道な訪問販売から大胆なビジネスモデルチェンジ

 電現ソリューションは、11年2月に創立された。初のフル決算となる13年1月期の年売上高は約5億8700万円だったが、16年1月期には約53億9100万円にまで急成長する。それは、もともと一般戸建て住宅向けにエコ住宅設備や太陽光発電パネルを訪問販売していたビジネスモデルを、概(おおむ)ね次のような「ソーラーマーケット」へと大転換したことによる。

 まず、電現ソリューションが用地を選定、取得したうえで太陽光発電所の開発、設計、施工を行う。こうして作り上げた大規模発電設備(メガソーラー)による太陽光発電システムと土地のセットを、一般個人投資家向けに分譲販売するようにしたのだ。

 これは、いってみれば分譲マンションの「太陽光発電システム版」である。分譲マンションでは、1つの土地に建ったマンションの一部屋が分譲販売されるが、この電現ソリューションのビジネスモデルは、1つの土地に建てた太陽光発電システムの一部分を分譲販売するものだったというわけだ。

 太陽光発電システムと土地をセットにして販売する新規事業で、電現ソリューションは一気に業績を伸ばした。かつては地道に訪問販売していたことを考えると、大胆に新しいビジネスモデルに転換したといえる。

 さらには、関係会社を通じ、北欧の企業が手掛ける小型バイオマス発電機材の国内独占販売契約を締結。秋田県に工場を設立し、同工場でバイオマス発電機の輸入後の販売や整備、メンテナンスを行う計画も進めていた。

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