トラックレンタル業界の“異端児”が繰り広げた「違法すれすれの錬金術」――見せかけの急成長が招いた倒産事件あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(6)(2/5 ページ)

» 2019年08月15日 05時00分 公開
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中小零細に融資して与信審査を“ランク上げ”

 業界は停滞ムード一色で、同業他社はどこも縮小均衡の一途をたどっていた。この不況を、どう倒れずにしのぐか――そんな消極的な雰囲気が流れるなか、PROEARTHは業界内解体工事用の特殊重機を多数保有し、首都圏の大型解体工事の需要のほか、11年の東日本大震災、16年の熊本地震などでは震災復興需要も積極的に取り込んだ。

 そのなかで得意先の開拓にも意欲的に取り組んだ。ある業界関係者によれば、「優良企業ばかりにこだわらず、ファイナンス&リースを活用して本来なら大型重機など買う体力のない中小・零細企業をも次々に顧客としていった」のである。

 実際にどのような取引が行われていたのかは、今となっては分からない。ただ、業界関係者などが語る同社のビジネスモデルとは以下のようなものだ。

 例えば、顧客である土木建築業者にトラックの購入を持ちかける。ただし、土木建築に使うトラックなどの重機は単価が高い。売り切りで販売するとなると数百万円〜1000万円はくだらず、購入者には頭金も必要となる。財務的な体力のない中小・零細企業が購入するのは困難だ。

 そこでPROEARTHから土木建築業者へ、総額の2割程度を融資する条件を提示し、土木建築業者にはリース会社との間でリース契約を結ばせる。

 つまり土木建築業者は、PROEARTHから購入したトラックをリース会社に売却したうえでリース契約を結ぶわけだが、PROEARTHからの融資があるおかげで、土木建築業者には当面の間、実質的なリース支払い負担がなくなる。

 そして実質的な支払いが始まるころにリース契約を解約させ、トラックはPROEARTHが買い取る。そこで土木建築業者はリース会社にリース残額を一括弁済することとなり、前倒しで完済したという実績がつくため、リース会社の与信でランクが上がる。

 その後、土木建築業者は、今度は別のリース会社との間で同じトラックのリース契約をより長期で結ぶ。支払い総額は変わらないが、長期契約になることで土木建築業者の月々の支払い額は減る。同じリース会社でやればリスケ(返済条件の変更)になるため、与信審査が上がったところで、別のリース会社で「実質的なリスケ」を得ていたのだ。

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