就活情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアは8月26日、リクナビを利用する学生の「内定辞退率」を予測して企業に販売していた問題について、個人情報保護委員会から勧告・指導を受けたと発表した。
同社の小林大三社長は、同日夜に開いた記者会見で「学生や大学、企業の皆さまにご迷惑をおかけして申し訳なかった」と謝罪し、「私たちの信頼は、事業の存続が危うくなるほど失墜している。問題の根本は、学生視点の欠如とガバナンス不足であり、事業の抜本的な見直しが必要だと考えている」とコメント。再発防止に向け、社内のガバナンス体制や新卒採用事業の経営体制を抜本的に見直す方針を明らかにした。
問題となっていたのは、同社が企業向けに提供していた「リクナビDMPフォロー」というサービス。2018年度に対象企業に応募した学生のリクナビ上の行動履歴などを分析して作成したアルゴリズムを作成し、2019年度の学生の行動履歴と照合することで内定辞退率を予測していた。
これについてリクルートキャリアは、8月1日時点で「学生からは、リクナビ登録時に提示するプライバシーポリシーへの同意をもって、データの提供について同意を得ていた」「提供された情報を、合否判定に活用しないことに同意した企業にのみ提供していた」などと説明していたが、内部調査により、2日にプライバシーポリシーから「第三者への個人情報提供に関する文言」が抜け落ちていたことが判明。7983人の学生の個人情報が同意を得ないまま企業に提供されていたことが明らかになり、5日にはサービスを廃止すると発表していた。
この問題について、ネット上では「学生のことを考えていないサービス」「学生に大量エントリーを促して辞退されやすい状況を作っておきながら、内定辞退率を販売するのはマッチポンプ商売だ」といった批判が続出していた。
一連の問題を受け、個人情報保護委員会は、個人データの安全管理のために必要な措置を講じていなかったこと、学生の同意を得ずに第三者に個人情報を提供していたこと、同意のない状態を予防・発見・修正するための管理体制がなかったこと――などが「個人情報の保護に関する法律」の規定違反であると指摘。リクルートキャリアに対し、「適正に個人の権利利益を保護するよう、組織体制を見直し、経営陣をはじめとして全社的に意識改革を行うなどの適切な措置を取ること」などを求めており、9月30日までに具体的な措置内容を報告するよう促している。
会見で小林社長は、「今回の問題は、組織全体の責任であり、適切な組織体制を作れなかった私の責任が大きい」と自身の責任にも言及。「経営者として誰が最善なのかも検討しなければならない」とする一方、「学生からの信頼を取り戻すためにも、今は私自身が組織変革に集中したい」と当面は社長としてとどまる考えを示した。
「これからは、学生の視点を最上位に置き、商品開発や事業運営を行えるようにするつもりだ。具体的に商品や経営体制をどのように変えていくのかについては、速やかに決定したい」(小林社長)。まずはリクナビを利用する学生の不安を軽減するための相談対応などを優先的に行うとしている。
リクナビDMPフォローの利用企業については「われわれのサービスが至らなかったがゆえに、『合否判定に内定辞退率を使っていたのではないか』という不信感を抱かせてしまったため、われわれからは公表を控えたい」(小林社長)として引き続き明らかにしなかったが、学生からの個人情報の開示請求があった場合には対応するとした。
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