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» 2019年09月12日 07時40分 公開

MITメディアラボの失態に見る、スポンサーと研究資金の闇世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

[山田敏弘,ITmedia]

「スポンサーからカネを引っ張る」大事な仕事

 すると、状況が一変する。米ニューヨーカー誌が、内部情報などをもとに、伊藤氏がエプスタイン氏からの寄付を問題だと認識しており、匿名で処理するよう内部に伝えていたことを示すやりとりなどを暴露した。というのも、エプスタインは過去に少女への性的虐待で有罪になっていたため、MITの規約で資金提供を受けられない要注意人物とされていたからだ。

 これで一気に風向きが変わり、伊藤氏は直ちに辞任することになった。

 ただ、ここまで世界的に人気がある研究機関なのに、なぜそんな怪しい人物からのカネを受け取らなければいけなかったのか。

 ある米国人の研究者は、「スポンサーや寄付などを集めるのも、米大学関連の研究機関の上級職にある人の重要な仕事で、評価の要素にもなるからです。逆に研究資金を引っ張ってこれないと研究機関には残れないケースもある」と実態を解説する。

 「メディアラボのような研究機関もそれは例外ではない」と言うのは、MITメディアラボの元関係者だ。

研究資金を引っ張ってくることが重要な仕事とされる

 MITのメディアラボには、民間企業などから研究者がどんどん送られている。ただ寄付をしたりスポンサーになったりしたからといって、誰でも研究者を送り込めるわけではない。ラボの元関係者は、こんな内部事情を筆者に漏らす。「企業は多額の寄付をメディアラボに提供することで、研究者の枠をもらえるのです。その額によって、受け入れてもらえる人数も決められている」

 もちろんそれぞれの企業からは優秀な人材が選ばれて派遣されるのだろうが、そういう形で短期研究をする人たちは、少なくとも筆者が留学していた数年前までは少なくなかった。世界的にも人気が高く、研究成果が世界的に評価されているメディアラボのような機関では、研究員になりたい人たちも数多い。応募はひっきりなしにあるというし、正面から研究内容で勝負してメディアラボに入ってくる研究者たちもいる。もちろん大学同士の提携などもあって、そのルートから来る人も少なくないことは、ここで明確にしておきたい。

 スポンサーを見つけ、カネを引っ張るのは、この手の研究施設では教授など上級職にある人たちの大事な仕事だ。「助教授などだと、だいたい数年で結果を出さないと肩たたきにあう。ここでいう結果とは、スポンサーからの研究費のことです」と、元関係者は言う。

 職員の中には、いつもスポンサーのことばかり考えていると漏らす人もいるくらいだ。スポンサーがもう少し必要だというような場合には「大変なストレスに押しつぶされそうになる」とも聞いた。

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