簡単に今回の騒動を振り返ると、全ては、エプスタイン氏の事件に端を発する。2007年にフロリダ州で多数の未成年者と児童売春をしていた疑いで逮捕され、有罪判決を受けていた億万長者の彼は、今年7月にニューヨーク州でも少女への性的虐待の容疑で起訴された。彼の交友関係はビジネス界や政界に広がっていたこともあり、大きな話題になった。彼はビジネスなどでどこかに出掛けるときは、しょっちゅう若い女性を数人引き連れていたという。
すると、メディア報道が盛んに行われている中、エプスタイン氏が勾留施設で自殺するという急展開に。日本でも大きく報じられたために記憶にある人も多いだろう。
そんなエプスタイン氏と一見、接点がなさそうな伊藤穣一氏は、世界的に知られたMITメディアラボの所長というだけでなく、米ニューヨーク・タイムズ紙の社外取締役なども務めていた。そんな彼が、性的虐待で有罪になっていた人物とつながっていたというのだから、穏やかではない。米メディアの報道によれば、伊藤氏はエプスタイン氏から800万ドル以上の寄付を受け取り(参考リンク)、さらにエプスタイン氏が所有していたカリブ海の別荘にも2度訪れていたという。
メディアはこの話に食いついて大きく報じたが、当初は伊藤氏を擁護する声も少なくなかった。
というのも、エプスタイン氏からカネを受けとっていたのは伊藤氏だけではなかったからだ。ハーバード大学の教授や有名科学者なども含まれており、ビル・ゲイツ氏も関与が指摘されている。研究者らの間では、研究費の寄付ということも考えると、伊藤氏のやったことは理解できるとの同情論もあった。
また伊藤氏の上司にあたるメディアラボ共同設立者で、ラボの権力者であるニコラス・ネグロポンテ氏が、伊藤氏にエプスタイン氏からの寄付を受け取るべきだとアドバイスしていたことが判明。この件が大騒動になった後の9月4日に、「今、当時に戻ることができたとしてもやはり『カネは受け取れ、受け取れ』と(伊藤氏に)言っただろう」と発言していた。もちろんこの発言を「暴言」であると否定的に見る向きもあり、学内やラボ内でも伊藤氏の辞任を求める声が公然と上がるようになっていた。
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