クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向
連載
» 2019年09月17日 07時00分 公開

岐路に立たされた東京モーターショー池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)

[池田直渡,ITmedia]

豊田会長の連投と会場不足

 そこで今回大幅なテコ入れを始めた。筆者の見る限り、トヨタ自動車の豊田章男社長が、前例を破って2回目の自工会会長に就任したことが大きい。日産自動車の西川廣人社長が、自社の完成検査問題を機に自工会会長を辞任したことを受けての緊急再登板という背景もあるが、結果的に前の2年にほぼ引き続く形で、会長職を引き受けることになったため、1期2年ではできなかった改革に着手できるという点が大きいと思う。

 内部の実態は分からないが、筆者の目から見てやり方がとてもトヨタっぽい。それはどういう意味かといえば、クルマ業界だけでなく「オールインダストリー」で広く開催し、未来のモビリティ社会に向けて「オープン」に進化/拡張していくと定義しているあたりだ。

自工会会員各社に加え、オリンピック・パラリンピック等経済界協議会、 経済産業省、NEDOと共催し、オールインダストリーでモーターショーを盛り上げるとしている

 時まさにCASEの胎動期であり、自動車産業だけでは未来が切り開けない。だからこそオールインダストリーという主張は、従来からトヨタが言ってきたこととピタリとシンクロする。

 もっと言えば、こういう行き詰まり感のある局面で「選択と集中」ではなく、あらゆるものをタブーなく組み込んで行く物量作戦的戦い方もまたトヨタ式である。

 例えば、東京オートサロンと結んでチューニングカーやカスタムカーを展示したり、モータースポーツジャパンや日本スーパーカー協会と結んでレース車両やスーパーカーのデモランや展示を行ったり、e-Motorsportsと提携してeスポーツ(ゲーム)の世界大会を組み込んだり、キッザニアとの提携では子供が自動車産業で働く街を作ったりというように、もう考え得るあらゆるものを詰め込んだ玉手箱になっている。行き先が分からない時は、お高くとまっていないで、成功している他のイベント主催者に頭を下げてでも全部やってみる。このやり方もとてもトヨタらしい。

入場無料のエリアとなる「DRIVE PARK」では、東京オートサロン、モータースポーツジャパンとも連携。FAI公認のドローンレースも予定するなど、他イベントと連携したイベントを多数開催する

 要は考え方だ。従来のTMSは、自工会が場所だけ用意して各メーカーに丸投げしたものだった。言葉を換えていえば、どうにもこうにも権威主義っぽさが抜けなかった。そもそも自動車ショーというものは、権威的である。ナショナルブランドのメーカーが、役所を頂点に担いで最先端のテクノロジーを発表展示する。そこにはそこはかとなく国威高揚のような雰囲気が漂う。それを全部無くしていいわけではないが、一方でもっと来場者中心に変わっていかなければならない。

 海外メーカーが背を向けた今、初めて自工会は自分たちで、多くの人に来場してもらい、楽しませるとは何なのか、どうしたら価値あるイベントになるのかを考えざるを得なくなった。そういう意味では、これこそTMSの真のスタートラインだともいえる。権威主義から脱却して、来客者を中心にする。

 という中で、メディアとの付き合い方も変えた。いままで新聞を主体とする大手マスメディアばかりと付き合って来た自工会が、方針を変え、折に触れて自動車ジャーナリストたちをレクチャーに呼び(念のために書いておくが無償である)、自工会やTMS事務局が何をしようとしているのかを説明するとともに、意見を求めるようになった。文句を付ける記事ばかりを書いてきた筆者をその中に加えれば、ダメ出しばかりするのを承知で意見を求められるあたり、自工会の改革マインドの本気ぶりがうかがい知れる。

 だから、今回のTMSに関しては、日本の自動車産業界の改革意識を見て回るという面において相当に面白いものになると思う。ただしそれがモーターショーとして面白いかどうかはまた別である。ジャーナリスト向けレクチャーの配布資料の最終ページには、「東京モーターショーも大きく変わります。皆様も一緒になって東京モーターショーの盛り上げをお願いします」というある意味悲痛なメッセージが大書されている。

 ひとりのもの書きとして、日本経済の応援をするのはむしろ望むところだが、日本経済と自工会の利害が必ずしも一致しない可能性がある以上、筆者としてはそこは是々非々の姿勢は譲れない。良ければ褒めるし、ダメなら批判する。

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