Libraを脅威と見る各国 それでも「ダメ」と言えない理由(2/3 ページ)

» 2019年10月11日 16時59分 公開
[斎藤健二ITmedia]

Libraを「ダメというのは難しい」

 一方で、各国はLibraを「ダメというのは難しい」と山岡氏。「これまでの仮想通貨は投機にしか使われなかったから議論されてこなかったが、Libraはまともに使われるかもしれない。Libraより匿名性を持った暗号資産はたくさんある、Libraより裏付け資産が不明なものもたくさんある。それらはダメなのかという話になる」

 Libraを禁止するには理由が必要だ。しかしその理由を突き詰めていくと、他の暗号資産も禁止せざるを得ない。だから、当局はマネーロンダリング規制やデータ流用の規制をきちんとしろ、と言い続けることになる。明確な結論を出すのは難しく、できる限り先延ばしさせるという結論になりやすい。

 これまでの仮想通貨は、決済にはほぼ使われてこなかった。そのため根本的な問題、KYC(本人確認)やAML(アンチマネーロンダリング)について深く考える必要がなかった。しかし、「Libraが出てきたので、監督省庁としても向き合わなければならなくなった」ことになる。

2020年前半スタートは難しい

 各国の引き伸ばしにより、Libraが当初計画していた2020年前半の開始は難しいと山岡氏は見る。結果、当初協会メンバーに入っていたPayPalの脱退や、Visa、Mastercardのトーンダウンにもつながっている。

 ただしLibraに求められているAMLやCFT(テロ資金供与対策)については、根本的な問題ではなく、対応可能なものだと見る。「AMLなどにいま求められているのはスコアリングだ。金融取引からやばい取引を100%見抜くのは無理。どのくらい犯罪にかかわっているのかスコアでチェックしていくのが現在のAMLやCFT対策。そう考えれば、Libraはほかのマネーよりも可能性がある。KYCがいまの銀行でもできるなら、Libraでもできるはず。暗号資産だからできないというわけではない」

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