「不景気だとカラムーチョが売れる!?」――知られざるナゾの法則に迫る偶然か、消費心理のメカニズムか(3/4 ページ)

» 2019年10月18日 08時00分 公開
[服部良祐ITmedia]

経済学の法則とも一致!?

 ではカラムーチョはどうだろうか。日経BP社や野村證券グループなどを歴任しマクロ経済に詳しい経済評論家の加谷珪一さんは、「タピオカの話は全くの偶然で関連性は薄めとみられるが、カラムーチョの例は何かしらの因果関係がある可能性もある」と分析する。

 加谷さんによると、街の弁当店の世界などでも、5〜10年くらいの短いスパンで同様にからい味の商品が売れる傾向がみられるという。カラムーチョも比較的短いスパンで不景気のタイミングに合わせて売り上げが上下しており、景気動向がその背景にある可能性があるとみる。

 加谷さんが「カラムーチョの法則」を説明できそうな例として挙げるのが、経済学において「景気とは一定の原因によって、決まった周期で法則的に循環している」とする「景気循環論」だ。「景気はとても長い期間で循環的に動く流れと、短い期間で動く流れの両方があるとされる」(加谷さん)。

 日本の景気動向が短いスパンでの不景気の発生を繰り返し、長期スパンでも少しずつ悪化傾向にあるとされているのと同様に、「カラムーチョも短い(不景気発生の)スパンで売り上げを伸ばし、長い循環で見てもからい物好きなユーザーを増やして売り上げを伸ばしているのかもしれない」とみる。

 ただ、ここでどうしても拭えないのが「証拠はあるの?」という疑問だ。加谷さんは「そもそも経済学における景気循環論も、経験則的に分かっているだけで、『なぜ循環が生じるか』については解明されていない。『設備投資やイノベーション発生の周期が原因だろう』といった仮説はあるものの、科学的な実証は無理」と説明する。

 その上で「経済学的にも、先行き不安のような消費者心理で景気が上下するといったことはあり得る。(カラムーチョのように)『消費者が閉塞感を感じて刺激を求めている』といった仮説も成り立たないわけではない」(加谷さん)と説く。

 加谷さんによると、このような景気と特定の商品の売り上げ動向を結び付ける説は各業界に存在するという。「全ては仮説の話であり過度に信じてはいけないが、こういう“法則”を考えることは経済学的にも重要」だとか。因果関係を明確に突き止めることは困難であっても、マーケティングを考える上で参考になる「あり得る法則」だと言えそうだ。

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