「東京産カカオ」のチョコはなぜ生まれたか “チョコレート屋のおやじ”の夢16年かけて商品化(2/3 ページ)

» 2019年10月29日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

ハードルは「土づくり」と「発酵」

 03年にカカオ栽培に着手した当初は、沖縄が栽培の候補地として有力だった。しかし、調査を進めるうちに、東京都の離島、小笠原村も気候条件を満たす候補地として挙がるように。「東京産」というブランドを掲げたいと、小笠原村の母島で栽培することに決めた。

 手探り状態から始めたカカオ栽培は失敗の連続。最初に植えた1600個の種からは167本の苗が育ち、約30センチまで伸びた。しかし、その全てがそれ以上育つことなく、枯れてしまった。最初から仕切り直しになった。その失敗から、土づくりの重要性とハウス栽培の可能性に気付き、現地のパートナーと一緒に栽培環境から見直した。

 カカオを育てる土は水はけがよくないとだめだという。腐葉土や堆肥の実験を重ねながら、最適な土になるように調整した。やがて木が育つようになっても、実がなる木とならない木があり、枯れてしまった木を植え替えることを繰り返した。

 試行錯誤の末、13年10月にカカオ豆を初収穫。そして現在では、4500平方メートルの農園に500本のカカオの木が育っている。収穫量は年々増えており、今年は1トンを収穫。当面は、この500本の木で年2トンの収穫を目指すという。

失敗を繰り返し、カカオポッド(実)が収穫できるようになった

 しかし、収穫できればすぐにチョコレートが作れるわけではない。最大のハードルは、カカオ豆の「発酵」だった。チョコレートの原料としてカカオを輸入する場合は、現地で発酵、乾燥させた状態で仕入れる。日本でカカオ豆を発酵させた前例はほとんどなかった。

 当初は、カカオの産地で行っている方法と同じように、バナナの葉で豆を包んだり、木箱に入れたりして発酵させてみた。しかし、「うまくコントロールできなかった」(平塚社長)。そこで、草加市の工場の敷地内にラボを設置し、温度や湿度を電気で調整できる保温庫を使って“最適解”を見つけることにした。「漬物と同じで、長く発酵させればいいというわけではない」(同)。ほどよく発酵する温度・湿度と発酵時間を探していった。

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