五輪マラソンはどうなる? 無謀なプロジェクトでコケる組織、3つの「あるある」スピン経済の歩き方(4/5 ページ)

» 2019年10月29日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

コチコチの前例踏襲を続けてきた

 次の(2)「最初に定めた方針を転換・修正できず『過去の踏襲』を続けがち」は、先日の関西電力の原発マネー還流問題でも出てきた「前例踏襲主義」のことである。巨大組織になればなるほど、一度始まってしまった慣習や社内ルールをあらためることができない。「それってなんかおかしくないスか?」なんてことを言って、先輩や前任者のやり方を否定するような輩は、「組織人失格」の烙印を押されてしまうのだ。

 このような「前例踏襲主義」に東京都もゴリゴリに毒されていることは、東京都環境局の『東京2020大会に向けた東京都「暑さ対策」推進会議』を見ればよく分かる。

 今から4年前、平成27年度会議の「暑さ対策の概要」には遮熱性舗装、保水性舗装を解説した図とともに、「当舗装を累計約136km整備を実施する」とある。ただ、この「道路を整備すれば涼しくなんじゃね」という文字通りの焼け石に水的な暑さ対策は当時から疑問を呈されており、医療関係者などからも見直しを求める声が上がっていた。

 実際、昨年末も日本医師会と東京都医師会が、遮熱性舗装の効果には疑問があるとして、競歩コース全体への天幕設置を提言している。

(出典:ロイター)

 では、そこから4年が経過した令和元年度会議でこの問題はどのようになったか。議論も重ねて、技術も向上をする中で当然、アップデートされているかと思いきやそんなことはない。

 会議資料を見ると、4年前と同じ解説図が使用され、「2020年までに、路面温度上昇抑制機能を有する遮熱性舗装等を累計約136km整備する」とある。そう、平成27年度から方針はビタッと固定され何も変わっていないのだ。

 唯一異なるのは先ほどのコピペ文に、「平成30年度末、遮熱性舗装(約109km)・保水性舗装(約20km)累計約129km整備済」と進捗状況が添えられているだけ。つまり、「官民の知恵を結集して、世界に誇る五輪にしましょう」なんて感じで意見やアイディアを求めて、課題に対して柔軟に対応する姿勢を見せる一方で、暑さ対策に関してはこの4年、異なる意見にはひたすら耳を塞ぎ続けて、コチコチの前例踏襲を続けてきたというわけだ。

 巨額予算を獲得した公共事業が簡単に手放すわけがないという「大人の事情」はよく分かる。一度動き出した巨大公共事業をそう簡単に止められるか、という役人世界のロジックもあるだろう。が、そのような頭カチカチの前例踏襲主義が、役所のムダなハコモノを量産し、多くの組織で不正や不祥事のトリガーになっているのも、また事実なのだ。

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