東京のオフィスビル開発が活況だ。現在渋谷の駅前で再開発による超高層ビルが次々と建っていることに象徴されるように、2018年、19年ともに過去20年の平均を超えた床面積のオフィスが供給された。そして20年には、さらにそれを上回る延べ30万坪ものオフィスが生まれようとしている。
法人向け不動産事業を営むCBRE(東京都千代田区)によると、グレードAと呼ばれる高級オフィスでは、空室率は0.8%。17年に続き18年に竣工したビルは満室状態だ。賃料も高止まりしている。
そんな中、各地のオフィス事情はどうなっているのか。また注目の街はどこなのか。CBREのリサーチヘッド エグゼクティブディレクターの大久保寛氏に聞いた。
東京のオフィス事情を概観すると、業種ごとに人気の街が浮かび上がってくる。IT関連企業であれば山手線の西側、士業などのプロフェッショナルサービスは丸の内を好み、メーカーには品川などの東側が人気だ。
特に「渋谷は行列ができるオフィスエリア」だと大久保氏は説明する。
2000年のITバブルの頃、ITベンチャー企業が続々開業した渋谷は、米シリコンバレーを真似てビットバレーとも呼ばれていた。この頃から、IT系企業の聖地といえば渋谷だ。実際IT企業の移転先の街を調べると、渋谷に移転してくる企業の56%はIT系となっている。
「渋谷は若者が集まる街。周辺地域に住んでいるので渋谷が好まれてきた。古いビルも多いので、賃料もそこまで高くないのも創業直後の企業に好まれた」(CBREで渋谷を担当する鈴木孝一リサーチ シニアディレクター)
その渋谷にも2つの動きがある。大手企業の回帰と、スタートアップの周辺地域への流出だ。
もともと渋谷で創業した企業も、拡大するにつれてオフィスが手狭になる。しかし、渋谷には当時、床面積の大きなオフィスビルが少なく、六本木などに移転せざるを得なかった。そうした企業が、渋谷に大規模オフィスビルが竣工となるこのタイミングで、渋谷に回帰してきている。渋谷から六本木ヒルズに移り、今年再び渋谷に戻ってきたGoogleが代表例だろう。
一方で、渋谷の賃料も、再開発などの影響から上昇してきた。賃料が最も安かった時期からの上昇率は、東京23区全体では32%だが、渋谷・恵比寿エリアは45%と各地域でトップだ。「六本木のほうが賃料が高いが、渋谷も新しいビルは遜色ない賃料レベルになってきている」(鈴木氏)
そうした背景から、昨今のIT系スタートアップは、渋谷周辺の地域に「染み出して」きている。近隣の恵比寿はガーデンプレイスに代表されるように賃料がすでに高くなっており、ここ数年注目されているのが五反田だ。比較的小ぶりなビルも多く、「新しいビルは五反田は多いわけではないが、新しいビルができるとすぐ埋まる」(鈴木氏)という。
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