突如、明らかになった簿外債務35億円 最後まで説明責任を果たさなかった婦人用バッグ卸が示す「倒産の図式」あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(11)(3/4 ページ)

» 2019年11月21日 05時00分 公開
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「分からないことだらけ」――怒り心頭のステークホルダー

 14年のリスケ要請により、モード・フアムの経営実態が明るみに出ることとなった。金融機関の借入金は、11行から約12億円と決算書より数億円も過大で、N社からの借入金は約35億6000万円まで膨れ上がっていた。

 この約35億6000万円は、決算書に一切記載されていない簿外債務だった。

 関係者から「売上高の2倍以上の借入金が突如として現れた。こんなことをされては財務分析による与信判断は意味をなさない」「N社という企業名は、このときに初めて聞いた。35億円をいつ借りて、どのように使われたのか。年商1億円のN社という企業がどうしてモード・フアムにそんな多額の資金を貸し付けられたのか。分からないことだらけだ」といった驚きや怒りの声が数多くあがったのは当然だろう。

 14年4月22日にバンクミーティングが開催され、今後の事業計画が提示された。

 その内容は(1)金融機関への借入金は、年内は債権額の0.2%ずつを返済し、15年以降は0.35%ずつを返済する、(2)未払いの租税債務や社会保険料についても分割弁済する(3)社員は全員解雇、アルバイト社員が業務を担当するなどであった。

 しかし金融機関にとっては、モード・フアムの収益や財務の状況が分からないまま、0.2%や0.35%といった根拠に乏しい返済額を提示され、さらに完済までに数十年かかる返済計画を提出されても、とうてい同意できるものではなかった。

 また、関係者の最大の関心事であった簿外債務約35億6000万円について、過去にさかのぼっての調査結果などは公表されなかった。

 N社の代表であると同時にモード・フアムの監査役であり、同社の経理を担当していたA氏も翌15年6月には監査役を辞任。大阪地裁へ提出された破産申立書の債権者名簿にもN社からの借入金は記載されておらず、借入金の資金使途や流れについて、ついに真相は明らかにされないままだった。

phot 膨れ上がった35億6000万円の借入金は、決算書に一切記載されていない簿外債務だった(写真提供:ゲッティイメージズ)

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