――ユニクロは一つ一つが無難なパーツである分、コーディネーションに優れていると思います。
どんな着こなしにも対応できるのがユニクロの強みです。
ユニクロって結局すごくスタンダードなんですよ。H&MやZARAであればトレンドをきちんと反映しているので、1枚着るだけで今風になります。一方ユニクロの場合、スタンダードである分、着こなしを工夫しないと、おしゃれとして差別化しにくい部分はあります。だからこそ今、着こなしの需要が生まれていて、僕がこうして活躍させていただいている現状もあると思います。
――MBさんはこうした「着こなし」の部分をインターネット上で発信し続けてきましたね。着こなしこそがファッションの神髄で、面白さだと感じている若者が多いのだと思います。
そういう土壌があって、いいものを安く、みんなが手にすることができる時代にはなりました。でも反面、みんながいいものを気軽に手に取れるようになってしまったがために、着こなしで差別化しなければいけないことも、宿命としてセットで出てきてしまいました。
だからそれを「分かりやすく伝える人」が必要になってきているとは思いますね。
――最新刊『もっと幸せに働こう 持たざる者に贈る新しい仕事術』では、「おしゃれじゃない人のことを日本一考えている」という記述がありましたね。おしゃれな人が「おしゃれじゃない人のことを考える」というのは、ありそうでなかったビジネス的視点だと思います。
ファッション業界やアパレル業界の人たちは、おしゃれな人に向けて商品や情報を発信している人が9割以上だったんですよ。ファッション雑誌だってそうじゃないですか。「おしゃれじゃない人」に対しては優しくない。もちろんそれは間違ってはいないのですが、まさにここは「差別化」のチャンスだと思いましたね。
「全然おしゃれじゃない人」を引っ張ってこられたらとても強いと思うし、業界も潤うと思ったんですよ。ここ10年あまり、ユニクロは盛り上がっていますが、業界全体として見ると、若干の縮小傾向にあります。僕は洋服のことが好きだし、アパレル業界が大好きなので、自分が何とかしたいという思いがありました。
――ファッションにそれほど興味がなかった層を「新規顧客」として引っ張ってきたのがMBさんの功績の1つだと思います。こうしたビジネス的視点はどうやって学んだのでしょうか。
僕は洋服が大好きですし、実はそういった部分も大半はファッションから教わったことなんですよ。僕が最近書いた本にも「差別化」というキーワードが登場していますが、この考え方も、ファッションから学んだことです。
ファッションって人と違う格好をしているから、みんなと何かが違うから褒められるのであって、それってビジネスも一緒だとずっと思って生きてきたんです。みんなと違うことをやっているから、みんなと違う結果が出せる。「それってファッションと一緒じゃん」と考えたんですね。
――なるほど、ファッションへの考え方もビジネスに通じるものがありますね。
でもそれって裏返しちゃうと、本当にファッションから教わったことなので、同じなんじゃないかなと思って実際にやってみたら、やっぱり同じような仕組みだったというだけとも言えます。一事が万事じゃないんですけど、何か1つのことって他のことにも転嫁できるのかなと思ったんですよね。
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