ネスレ日本、「アンバサダーの次」のコーヒーマーケティング戦略とは 「オフィス以外」のどこにコーヒー売り込む?(1/3 ページ)

» 2019年11月29日 07時00分 公開
[服部良祐ITmedia]

 欧米発祥で近年は日本でも浸透してきたアンバサダー・マーケティング。アンバサダーは「大使」を意味し、商品やサービスのファンにそれらを広めてもらう手法として知られる。

 中でもこのマーケティングのはしりとして知られるのが、ネスレ日本の「ネスカフェ アンバサダー」。コーヒーマシンを一般ユーザーにレンタルし、勤め先などに置いてもらってオフィス需要を取り込む施策だ。2012年にスタートし、設置場所は約46万カ所まで増えた。

 ただ、競合他社の参入などもありその伸びは最近鈍ってきたという。同社が新たにコーヒーマシンのターゲットに定めたのは、常に外部の客が集まる一般のショップや事業所だ。こうした、従来は自動販売機以外にコーヒーがあまり売られていなかった拠点を「スモールマス(大規模でないが一定の需要のある市場)」とみなし、オフィス以外の新需要を掘り起こすという。ネスレ日本の「アンバサダーの次」のマーケティング戦略を追った。

photo 会見でネスレ日本のマーケティング戦略を発表した高岡浩三社長(10月、東京・渋谷)

家庭需要の減少受けアンバサダーでオフィス取り込んだ

 「今、家庭内(コーヒー消費)は激減している。外でコーヒーが飲みたいときにネスカフェなどのブランドが手に届くところにあるか。そういう状況を作れるかどうかが我々の狙いだ」。10月、都内で開かれたネスレ日本の記者会見で高岡浩三社長は説明した。

 最近、高岡社長が会見のたびに強調しているのが家庭内でのコーヒー消費の減少だ。全日本コーヒー協会によると、「1週間に1人当たりのインスタントコーヒーを飲む量」は18年には3.92杯と、4.69杯だった10年頃より減少傾向にある。同じく「1週間に1人当たりの家庭で飲むコーヒー量」も、18年は6.54杯と14年の7.04杯より減った。

 インスタント(即席)など家庭用コーヒーでトップシェアの同社。だからこそ、家庭需要の先細りを見据え強化してきたのが、オフィス需要を取り込むための「ネスカフェ アンバサダー」だった。一般ユーザーにコーヒーマシンを無料でレンタルし、自身の勤め先で広めてもらうことで、オフィスという新たな需要を開拓してきた。自販機市場が苦戦する一方で、ネスカフェ アンバサダーは右肩上がりの成長を続けてきた。

 ただ、近年はその伸びも勢いが緩やかになっているという。同社レギュラーソリュブルコーヒービジネス部の島川基部長は「最近は競合他社でも、コーヒーのサブスクリプション(定額制)や定期購入をうたうサービスが増えてきた」と説明する。コンビニコーヒーなどに代表されるコーヒーブームも一服してきた中で、コーヒーにおけるアンバサダーの「次のマーケティング」を模索する必要が出てきたという。

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