過去から現在にかけて、たばこの消費方法はどのように変わってきているのか。荒木氏は、日本独自の傾向として「低タール化」を挙げた。「もともと、タール量の多いたばこが人気だった。そこから徐々に低タール化の方向へ進んできており、それも一服した今はフレーバーで広がりを見せている」
荒木氏によると、JTで商品ブランディングを意識した最初の商品は30年ほど前に登場した「マイルドセブン」(現在は「メビウス」に改称)だという。マイルドセブンは「セブンスター」の“子ども”に当たる銘柄だ。低タール化の流れをつかみ、セブンスターの低タール商品として企画した。するとヒットを収め、今でも紙巻きたばこシェアのうち、30%超を占める“売れっ子”だ。マイルドセブンの登場後、1つの銘柄でタールの量を変える商品ラインアップを展開する手法が主流となっていく。
ちなみに、一度吸い始めると喫煙者が他の銘柄に変えることは少なく、同じものを吸い続ける人が多いという。なおかつ喫煙者は年齢を重ねるごとに低タールのものを好むようになるといい、高齢社会におけるリピーター確保にも一役買っている。
単にたばこを吸わない人ではなく、最近ではたばこや喫煙者に対して敵意を向けるような“嫌煙”ともいうべき人も増えてきている。こうした状況を、JTはどのように考えているのか。
荒木氏は「選択肢を増やすことが重要だと考えている」と話す。「『たばこを吸っている人に幸せになってほしい』という思いはあるが、吸う人を増やすような活動はしていない」という。マナーや受動喫煙に関する広告を通し、「たばこを吸ってください」というのではなく、「たばこを吸っている人がいてもいい」という価値観を提示しているのがJTの基本方針だ。
そのため「分煙」にも注力している。04年に「分煙コンサルティングチーム」を立ち上げ、公共施設や商業施設の分煙を後押ししている。喫煙所からのにおい漏れ対策や新しいビルを建てるときに喫煙室を設けるケースなどを含め、18年末までで2万件ほどを手掛けている。
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