次々と手数料の無料化が進む中、では証券業界はどこで利潤を得られるのか。ポイントは、「ここでしかない」という唯一性だ。
公開株式の売買やポートフォリオ組成などは、いわばプロセス自体がコモディティ化している。一方で、非公開資産の取引、例えば不動産やプライベートエクイティ(PE、未上場株式)など、取り扱える人が限られる商品については、ブローカレッジでも付加価値が付けられる。同様に、「ここでしかない」ものになり得ると大原氏が見込むのが金融アドバイスだ。
フィデリティ投信のデレック・ヤング社長は、「手助けやアドバイスを個人投資家は求めており、それに対しては対価を払っても構わないという人が増えている。適正で有用なサービスを提供すことに対価を支払うトレンドに変わってきている」と、12月10日にメディア向け説明会で話した。フィデリティ証券は投資信託の購入手数料を無料化しており、またオンライン証券最大手の米フィデリティ・イベントメンツも10月10日に手数料撤廃を発表している。
「対面での金融アドバイスのどこに付加価値があるのか。(米大手投資信託の)バンガードはコーチングだと言っている。逆に、アセットアロケーションの付加価値はほぼゼロだ。コストは預け入れ資産の2〜3%だが、税金面などのアドバイスも行う」(大原氏)
米国では、個人向け投資顧問業(RIA)が増加しており、日本でも独立系金融アドバイザー(IFA)の人気が高まっている。ネット証券の台頭で、オンラインでの売買は容易になったが、お金全体に対する相談をしたいというニーズが逆に増えているからだ。
一方で、「アドバイスギャップ」と呼ばれる課題も出てきている。これは、資産額が大きい人はRIAなどの専門家から、投資だけでなく税金、相続、家族まで金銭がらみのアドバイスを受けられるが、資産規模の小さい若年層は、支払えるアドバイス報酬が相対的に小さいため、十分なアドバイスを受けられないという問題だ。
「若年層は、悩みが比較的シンプルなので、アドバイスもロボアドバイザーなどのアルゴリズムによるものが中心になる。ただし本当は、若年層も含めて人がサポートするほうがいい。人を介在した総合的なサービスは有益だ」(大原氏)
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