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» 2019年12月12日 07時20分 公開

なぜ今、証券業界で手数料無料化が進むのか? (3/4)

[斎藤健二,ITmedia]

証券業界に残る最後の利潤の源、金融アドバイス

 次々と手数料の無料化が進む中、では証券業界はどこで利潤を得られるのか。ポイントは、「ここでしかない」という唯一性だ。

 公開株式の売買やポートフォリオ組成などは、いわばプロセス自体がコモディティ化している。一方で、非公開資産の取引、例えば不動産やプライベートエクイティ(PE、未上場株式)など、取り扱える人が限られる商品については、ブローカレッジでも付加価値が付けられる。同様に、「ここでしかない」ものになり得ると大原氏が見込むのが金融アドバイスだ。

 フィデリティ投信のデレック・ヤング社長は、「手助けやアドバイスを個人投資家は求めており、それに対しては対価を払っても構わないという人が増えている。適正で有用なサービスを提供すことに対価を支払うトレンドに変わってきている」と、12月10日にメディア向け説明会で話した。フィデリティ証券は投資信託の購入手数料を無料化しており、またオンライン証券最大手の米フィデリティ・イベントメンツも10月10日に手数料撤廃を発表している。

 「対面での金融アドバイスのどこに付加価値があるのか。(米大手投資信託の)バンガードはコーチングだと言っている。逆に、アセットアロケーションの付加価値はほぼゼロだ。コストは預け入れ資産の2〜3%だが、税金面などのアドバイスも行う」(大原氏)

 米国では、個人向け投資顧問業(RIA)が増加しており、日本でも独立系金融アドバイザー(IFA)の人気が高まっている。ネット証券の台頭で、オンラインでの売買は容易になったが、お金全体に対する相談をしたいというニーズが逆に増えているからだ。

IFA大手10社の預かり資産残高合計の推移。18年末には3500億円に達している(金融庁 市場ワーキンググループ資料より)

 一方で、「アドバイスギャップ」と呼ばれる課題も出てきている。これは、資産額が大きい人はRIAなどの専門家から、投資だけでなく税金、相続、家族まで金銭がらみのアドバイスを受けられるが、資産規模の小さい若年層は、支払えるアドバイス報酬が相対的に小さいため、十分なアドバイスを受けられないという問題だ。

 「若年層は、悩みが比較的シンプルなので、アドバイスもロボアドバイザーなどのアルゴリズムによるものが中心になる。ただし本当は、若年層も含めて人がサポートするほうがいい。人を介在した総合的なサービスは有益だ」(大原氏)

アドバイス提供側が、取引コストとの兼ね合いから対象金融資産残高などに下限を設けるケースがあり、アドバイスを受けたいのに受けられないという人も出てきている(みずほ総研資料より)

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