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» 2019年12月13日 11時38分 公開

古田拓也「今更聞けない金融ビジネスの基礎」:Slackも活用、「直接上場」がIPOよりも優れているワケ (1/3)

近年、注目を集めている金融商品取引所への上場方法が「直接上場」という手法だ。世界的に一般的な手法である「IPO」と比較すると、直接上場は新株の発行(資金調達)を伴わない点で違いがある。直接上場のメリットはどのようなものがあるのだろうか。

[古田拓也,ITmedia]

 近年、注目を集めている金融商品取引所への上場方法が「直接上場」という手法だ。世界的に一般的な手法である「IPO」と比較すると、直接上場は新株の発行(資金調達)を伴わない点で違いがある。直近では、音楽ストリーミングサービスのSpotifyやビジネスチャットアプリのSlackが、海外で直接上場を選択したことから話題だ。

 12月11日に上場した「マクアケ」は、IPOで98万株の新株を公募し、およそ15億円を市場から調達する。しかし、資金調達の方法が多様化した今日においては、IPOによる新株の発行を必要としない非上場企業が、直接上場を選択する動きが足元で活発になっている。

 直接上場にはどのようなメリットがあるのだろうか。

直接上場は企業価値が効率的に評価される

 上場を目指す企業が直接上場を活用するメリットは主に3つだ。それは、企業価値評価が市場に委ねられること、株式の希薄化防止、そして上場にかかるコストの削減だ。今回は、ちまたであまり触れられない「企業価値評価が市場に委ねられる」という点を検討してみよう。

 直接上場の場合は「公募価格」が存在しない。IPOでは、公募価格が低ければ、どんなに初値が高くても新株は公募価格で個人投資家に配分され、その差額は個人投資家のキャピタルゲインとなる。

 上場企業の株価は、理論で導き出せる定量要因以上に、投資家の期待や市場環境といった定性要因が左右する。高い不確実性のもとでは公募割れのリスクが高く、引受証券会社としては高い公募価格を付けにくい。リテール顧客がIPOで損失を被ってしまうと、IPOに対する個人投資家の信頼が失墜してしまい、公募株式の受け皿が失われてしまうからだ。

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