世界の有能人材が「日本を避ける」未来 元TBS記者の性暴行事件が及ぼす深刻な影響世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

» 2019年12月26日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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日本全体への不信感が募っていく

 ゴーン被告のケースでも指摘されたように、有能なビジネスパーソンなどが日本を敬遠する可能性もあるのだ。日本で仕事をしたくはない、と。女性だけでなく、男性であっても、国家が思うように刑事事件も操作できてしまうのなら、そんな怖い社会はない。結果的に、そういうネガティブな影響を日本経済だけでなく、日本全体に与えるかもしれないことを真剣に考える必要があるだろう。

 あらためて言うが、筆者は伊藤氏と山口氏のどちらの言い分が正しいかは分からない。また刑事事件として逮捕されなかった理由も、警視庁捜査一課がわざわざ出てきて、刑事部長が「事件の中身として、(逮捕は必要ないと)私が決裁した」と自ら判断する事件だっただけにすぎないのかもしれない。

 ただそれが問題ではない。問題は、海外メディアの目からは、政府の介入か、はたまた政府への忖度か何かでレイプ事件がつぶされたと疑われ、大々的に報じられている事実である。それに外国人は驚いている。

 こうした日本への不信感が蓄積されれば、せっかく日本人が作り上げてきたカルチャーやビジネスなど、良好なイメージが崩れることになりかねない。そういう観点から今回の事件について議論すべきではないだろうか。ニュースにも国境がなくなっている今の時代では、なおさらである。

 さもないと、ただでさえ力が落ちつつある日本がますます衰退することになると自覚すべきだろう。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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新刊『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)12月24日発売!

 米国、中国、ロシア、北朝鮮、韓国、イラン……。日本は国外のサイバー脅威から狙われていることをそろそろ自覚すべきではないでしょうか。

 間もなく5G(第5世代移動通信システム)が到来し、IoTやデジタルデバイスなどのネットワークが爆発的に広がれば、私たちは現実社会とサイバー世界の境界がほとんどなくなる世界に暮らすことになります。新しいテクノロジーによって便利さとエキサイトメントを享受できる一方で、サイバー攻撃のリスクは今と比較できないほど高まります。世界の政府系、非国家系サイバー組織、またマフィアなど犯罪組織の活動の場は、おのずとサイバー世界に移るのです。

 いや、その流れはもうとっくに始まっています。例えば日本でも、京アニ襲撃犯がサイバーを駆使し、一方でJALは大金をだまし取られている。インフラも侵入されているのです。本著が、その実態にまだ気付いていない日本人に、サイバーセキュリティについて考えてもらうきっかけになればと願っています。

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