2020年の世界:投資テーマとイベント一覧KAMIYAMA Reports(1/2 ページ)

» 2020年01月16日 19時38分 公開
[神山直樹日興アセットマネジメント]
日興アセットマネジメント

健全な低成長とインフレの“匂い”

 2020年の世界経済は、低成長率とはいえ健全さを保つと考える。18年に16年の低迷からの反動で比較的高い成長を実現した先進国は、19年に減速した。例えば、米国の小売売上高は、17年から加速し、18年に高い成長となったが、19年に入って成長率が低下した。

 しかし、売上高それ自体が低下(減少)したのではない。500万円の収入が550万円になれば10%成長、それが600万になれば9%成長となるように、増加額は同じでも、収入水準の上昇に伴って成長率が「落ち着いてきた」ととらえることができる。つまり、世界の成長トレンドが壊れたのではなく、成長サイクルが緩むタイミングにすぎないといえる。

 19年には、中国のデレバレッジ(過剰債務の削減)の影響もあり製造業の減速が目立った。しかし、米国をはじめ先進国ではサービス業の安定で雇用が増え、給与も上昇傾向だった。総じて経済は健全で、20年は堅調な需要を背景に製造業も緩やかに持ち直すだろう。

 日本株にとってポジティブなシナリオは、20年後半にもインフレの“匂い”がしはじめることだ。世界的に「賃金が上昇しているのにインフレにならない」状態が続いている。

 米国では、19年に入って、賃金上昇は加速傾向だがインフレの兆しが見えないことで、FRB(米連邦準備制度理事会)は「予防的利下げ」を行うことができた。しかし、欧米をはじめ世界的に消費が堅調で、需要総量は伸びる可能性がある。日本では、実質輸出がすでにリーマン・ショック前の水準に戻っており、ここからさらに売上げが伸びれば、在庫減、生産増、設備投資や残業増といった形で、経済拡大と「お金よりモノ」というインフレ・マインドが高まる可能性も出てくる。

 もちろん輸出数量増だけでは一般物価は上がらないが、消費税増税の影響が思いのほか小さければ、20年末までに、日本でも実質所得の増加とインフレ期待が出てくるかもしれない(メイン・シナリオとするには少し気が早いが)。そうなれば、日本株に対する外国人の興味は大きくなるはずだ。

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