10年後を見据えた中国への投資KAMIYAMA Reports(2/2 ページ)

» 2020年01月23日 11時26分 公開
[神山直樹日興アセットマネジメント]
日興アセットマネジメント
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金利・クレジット・為替:長期的成長を支える要因がある

 新興国の為替の増価があるとすれば、生産性の向上が背景となるはずだ。一人当たりの所得の高まりと考えても良い。ここでは、株式投資(前項)で述べた構造変化とは異なる観点で、中国の成長を支える要因を考えてみる。

 コンファレンスで日興アセットマネジメントアジア(シンガポール)の債券運用担当者があげた中程度の安定した成長のドライバーは、(1)都市圏開発を通じて、大都市から衛星都市に成長や効率改善が移転、(2)R&Dへの投資拡大による特許申請・付与の増大と技術の海外依存の低下、(3)コーポレート・ガバナンスの改善による資金調達の改善、だ。(2)や(3)は前述したテクノロジーへの投資拡大、株式市場の構造改善と裏表の関係にある。

 3つの成長ドライバーは共通して効率の改善を重視する。経済活動や資本の効率改善で、高齢化の影響を緩和しながら、質の高い中程度の成長に向かう可能性が高まっている。

 高い水準のレバレッジは、中国投資のリスクになる。地方の負債について、シャドーバンキングからの脱却などの構造改善は進んでいるものの、外部ショックなどが高いレバレッジのシステミック・リスクや流動性リスクを高めることになる。外部ショックには、米中貿易摩擦や地政学リスクがあげられるだろう。

 債券投資の観点からは、オンショア債への投資拡大が投資先の多様化の対象となり得る点に注目する。市場構造として、銀行経由の間接金融から社債などの直接金融へのシフトが始まっており、これも投資対象の拡大につながる。シャドーバンキングを使ったオフバランスシートからオンバランスシートへの移行も進むので、さまざまな投資対象が利用可能になりそうだ。市場の成熟が進み、信用・流動性プレミアムが価格(利回り)に適切に反映されるようになってきた。

 人民元の行く末を予想するのは難しい。過去10年の人民元は、米ドルに対して6.8人民元(2010年1月)から一時6.0人民元(2013年12月)に近づいた後、6.9人民元(2020年1月17日現在)に下落した。本来、生産性の改善は為替の増価につながると期待できるが、中国の場合、資本逃避のリスクなどから政策的に為替の安定化を求められているため、為替の変動が中国の外貨準備の影響を受けることもある。

 ただし、中国は人民元安を長期的に政策目標にしておらず、経済の発展段階に応じて上昇することを日本などの例で見ているので、一言で言えば、今後10年程度の為替レートについて、緩やかな成長に応じた安定的な上昇を想定して良いだろう。

筆者:神山直樹(かみやまなおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト。長年、投資戦略やファイナンス理論に関わってきた経験をもとに、投資の参考となるテーマを取り上げます。

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