竹書房で法務を担当する竹村響氏が、1月7日に投稿サイト「note」に掲載した今回の経緯からその一端が窺(うかが)える。
竹村氏は「著作権侵害サイトの問題についてそれを運営する者たちが絶対に必要とする要素が大きく2つあります。それがクラウドサーバと広告システム」と説明する。著作権侵害に対抗するには、サイト運営者や違法コンテンツのアップローダーだけでなく、サイト運営のインフラを提供するクラウドサーバと、ビジネスを支える広告システムに切り込む必要があるとの認識だ。今回はその1つに踏み込んだ。
竹書房の主張は極めて真っ当に映るが、それでは他社がこれまでクラウドフレアに触れなかったのはなぜだろう。実は今回の訴訟は、必ずしも原告の勝利が見込める案件でないとの見方がある。
クラウドフレア自体は、違法にコンテンツをアップしておらず、コンテンツを自社サーバに保有しているわけでもない。サイト運営の効率化の仕組み提供となると、その責任を問えるのか、犯罪性を立証できるかは不確かだ。勝訴を得られるかは微妙ともいう。
それではなぜ竹書房は、手間とリスクを引き受けるのだろう。もちろん勝訴すれば、権利者にとってありがたい。さらに多くの出版社が後に続くだろう。
仮に主張が認められなくても、実際には本訴訟の筋は悪くない。認められなかった部分を前提に今後はどう対処すればよいか戦略に活かせる。さらに「海賊版は許さない」というマンガ家、出版社の姿勢をファンや業界にアピールできることは重要だ。「違法行為は認めない」との確固とした態度は長期的には利益になるはずだ。
今回の訴訟は、すでに米国のアニメ・マンガ関連のメディアやコミュティサイト、SNSでも話題になっている。ネットユーザーからは、積極的な評価も多い。
一昔前なら、海外のネットのマンガユーザーは「無料で全部読ませろ!」との過激な意見が目立った。しかし現在は必ずしもそうでない。海外ファンの考え方に代表されるような、市場環境の変化も今回の動きの背景にあるだろう。
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