2020年のスタートに、コンテンツ業界を驚かすニュースが飛び込んできた。中堅出版社の竹書房(東京都千代田区)が、米国のコンテンツ配信ネットワーク企業クラウドフレア(Cloudflare, Inc.)に民事訴訟を起こしたという。1月7日の発表によれば、竹書房はWebマンガ『どるから』の著者ハナムラさんと共に著作権侵害関連でクラウドフレアを訴え、19年12月20日付で東京地裁に受理された。
日本ではあまりよく知られない企業、クラウドフレアのコンテンツ配信における役割はやや分かりにくい。Webサイトは同社のクラウドサーバのサービスを使うことで、自社がネットに流通させる大量のコンテンツの配信を効率化し、サイトの高速化・安定化を実現することができる。問題はクラウドフレアがニューヨーク証券取引所の上場企業であるにも関わらず、多くのマンガやアニメなどの海賊サイトの利用を受け入れていることだ。
竹書房はクラウドフレアが海賊サイトによる違法行為の補助をしているとして、コンテンツの削除と損害賠償の支払いを要求した。ただし請求賠償額は少額で、より大きな目的はネット上からの海賊コンテンツの排除である。
ネット上の違法コンテンツに対して、アニメやゲーム、マンガなどの日本のエンタメ企業が厳しい対応をすることはかつてほど珍しくない。それでも今回の訴訟はネットで大きな話題となった。
理由の1つは竹書房自体にある。4コママンガや劇画などで知られる同社は、一般的なファンというよりもマニアックな人と親和性が高い。大川ぶくぶが『まんがライフWIN』で連載するマンガを原作に18年にアニメ化された『ポプテピピック』は、そんな作品の1つ。不条理過ぎる展開で大ヒットした。作中で竹書房は社名やビルまで登場し、一挙に知名度を上げた。
国内出版社がネットでの海賊行為に対して訴訟を起こす際は、大きな事件でも大手出版社と作家の1組で行い、提訴の額自体は小規模なことが多い。こうした訴訟に伴うコストは小さくないことから、大企業が代表して事件化することで、業界各社の負担をできる限り小さくしている側面が強い。海外企業に対する裁判となれば、さらに多くの費用がかかる。日本のコンテンツ会社は中小が多く、対策をしたくてもできないのが現状なのである。
竹書房は出版会社としては中堅だが、年間売上高は150億円と世間的に見れば小ぶりな企業だ。それが米国のITの最先端にいる企業を訴える。竹書房らしいラジカルさに、ファンや業界の関心も集まった。
竹書房が果敢に戦いを挑むのは、どんな理由があるのだろう。
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