元大阪府知事・元大阪市長、橋下徹――。彼の名前を聞くと、「政治の世界で仕事をしてきた人間」という印象が強いかもしれない。だが、もともと橋下は有能な弁護士だった。橋下自身も、政治家として力を発揮してきた土台には「民間の世界で身につけてきた仕事の基本がある」と語っている。
弁護士であるにもかかわらずスーツを着ず、茶髪、Gパン、革ジャンといった個性的な出でたちでマスメディアに出演し、その後は政治家として巨大な役所組織を率いるリーダーとなった。政治家として時には周囲と激しく衝突し、「異端視」されながらも行政改革に奮闘したことは誰もが認めるところだろう。
行政改革とは、言い換えれば「組織改革」だ。大阪府庁、大阪市庁という組織を変革し、それまで停滞の一途をたどっていた大阪を、圧倒的な実行力で立て直してきた。「適正な組織づくり」という点においては、公的組織と民間組織の間で大きな違いはない。どちらも、組織の意欲や機能性を高め、その組織の使命を実行し、世の中の役に立てていく。つまり、「定めた目標・戦略を実行するために適正な組織をつくる」点では変わらない。
この連載では新著『異端のすすめ 強みを武器にする生き方』(SB新書)の中から巨大組織を率いたリーダー、橋下徹の仕事や働き方についての考え方をお届けしていく。第2回目は、組織の中でうまく立ち回るために、集団内の「権力者」を見極めるべきだと主張する橋下に、「人間関係術」について語ってもらった。
人が集まれば軋轢(あつれき)が起こるというのは世の常であり、皆さんもさかのぼれば小学生の頃から人間関係の悩みはつきものだったでしょう。「長期休暇明けは子どもの自殺が増える」ともいわれており、悲しいニュースを耳にするたびに「君たちにとっては学校という小さな世界が人生の全てなんだろうけど、本当は、世界はもっともっと広いんだよ」と教えてあげたかったと、胸が痛くなります。
小学生にとっては学校のクラスの友達関係が全てかもしれませんが、社会人になった今の僕らは「小学校時代における目の前の人間関係」だけが自分の世界ではないことを知っています。小学校や中学校の同級生の多くと、社会人になってからも親しく付き合っているという人はそうたくさんはいないでしょう。
僕は、高校時代のラグビー部の仲間とは今も親しくしていますが、小学校時代の友人で今も親しく付き合っている人となると皆無。中学校時代でいえば、2人しかいません。大学時代の友人でも数人です。まあ、僕は学生時代の友人が少ない部類ですが、友人が多い人でも100人単位で今も付き合っているということはほとんどないでしょう。
そして社会人になってからも、年を経るごとに、新しい出会いがあります。かつてあれほど自分の生活の中心を占めていた「学校」という世界において、未来永劫(えいごう)の友人だと思っていた相手でも、意外と簡単に縁は切れてしまうものなのです。それを寂しいと思う人もいるかもしれませんが、反面、気楽ともいえるのではないでしょうか。人間関係はときとともに移り変わるものなのだから、たとえ今、人間関係に苦労していても、それも変わるものであり、悩むに足らないことだといえるからです。
人間関係に思い悩むと、大人でも精神的に追い詰められます。職場の人間関係の悩みが深くなってしまうのは、その人とずっと付き合わなくてはいけないという思い込みがあるからでしょう。でも、職場の人間関係が全てではないし、その人間関係ですら今後、永遠に固定されるものでもない。今の人間関係が辛くてどうしても我慢できないのなら、転職を考えることも大いにありだと僕は思います。
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