「コロナウイルスへの恐怖が(買い占めの)下地にあるのは言うまでもないが、メディアが『マスクは必須』といった内容にとどまらず、『各地で売り切れ』『ネットで高値で販売』などと盛んに報道し、その希少性を広く過剰に認識させている点が大きい」(橋元教授)。
特に橋元教授が今回、強い影響力を与えているとみるのが、テレビだ。社会心理学では、テレビや新聞が特定の話題を多く報道することで、「このニュースは注目すべきテーマだ」などと世論を形成する「議題設定効果(機能)」という説がある。
「テレビは映像でマスクをしている人々の様子や、必要性を説く専門家コメントを伝え、『マスク』という存在を強く認識させた。さらに、報道・情報番組でトップ扱いで報道しているため、『これが日本で一番人々が関心あるニュースなのか』『自分も今すぐ行動しなければ』という認識を人々に持たせ、思考回路の中でマスクが非常に大きな部分を占めるようにしている」(橋元教授)。
多くのニュースの中でも「人々が特に関心を持つだろう」とテレビが選択して伝えているマスク関連報道。これらが逆に、視聴者の「マスクに危機感を持つべき」という認識を強化している、というわけだ。加えて橋元教授は、ネット上のニュースも特に若年層の危機感を加速する効果をもたらしている、とみる。
では、消費者に冷静な行動を促すにはどうすべきか。橋元教授は「実際にマスクは品不足になっているのか、需給状況の実態をメディアが正しく、冷静に報道する必要がある」と指摘する。実際、オイルショック時も日本に石油の備蓄は十分にあり、「消費者が適切にトイレットペーパーを購入すれば、不足する事態にはならなかっただろう」(橋元教授)。
医療職以外の一般人にとって、1人で1日に大量の枚数を使うことはちょっと考えにくい商品、マスク。「大量の買いだめは本当に必要?」と消費者側が考え直すと同時に、テレビをはじめとしたマスメディアも、その「希少性」をあおらないための冷静で客観的な報道が求められている、と言えそうだ。
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