日本の若者が「それでも」韓流に熱狂するワケ――中高年が理解できない深層心理誤解だらけの日韓関係を問う(4/5 ページ)

» 2020年02月17日 07時00分 公開
[澤田克己ITmedia]
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日本の中高年、なぜ「韓国に上から目線?」

 1967年生まれの私は、飯塚さんの言う「大人」世代だ。中高生の頃には韓国のことなど考えたこともなかった。

 20歳だった1988年の夏にバックパックを担いで初めて韓国を旅行したのだが、韓国を行き先に選んだのは1カ月後に迫っていたソウル五輪とも無関係で、単にアルバイトをして貯(た)めた予算の制約でそこしか行けなかったからだった。

 それなのに、3週間の一人旅を通じて「日本と同じようでいて違う」隣国に関心を抱くようになり、結局は朝鮮半島情勢を専門に追うようになった。人生とは面白いものである。

 縁があって翌年にはソウルで韓国語を学ぶこととなったから、韓国の歌や映画にはその頃から親しんできた。同世代の日本人の中では韓国文化に親近感を持っている方だろうと思うし、日本の若者に韓流人気が高いことも不思議とは思わない。

 そもそも男性グループ「防弾少年団(BTS)」の人気は世界的なものであり、「日本で人気」などというレベルではない。BTSは2019年4月、ビートルズ以来という1年間で3回の米ビルボード・アルバムチャート1位という驚異的なセールスを記録した。

 日本の中高年世代に「上から目線」で韓国を見る傾向が残っているという話をすると、若者から「なんで『上から目線』になるんですか?」と聞かれるのだが、それにも慣れてきた。

 今の若者たちには日韓の国力差などと言われてもピンとこないのである。飯塚さんから「韓国っぽいというのは、カッコいいという意味で使われている」と聞いても、「そんなものか」と思った。

 それでも、日本の大学生と韓国からの留学生を集めたシンポジウムの司会をした時、日本人学生から「韓国はあこがれの対象」と言われた時には驚いた。「韓国で流行しているというのは宣伝文句」なのだという。

 私たちの世代の感覚で言うなら、「ニューヨークの最先端」とか「フランスで流行」といった言葉と似たような印象ということなのだろう。後で20代の若手記者に聞いてみると、「10代の頃から目にしてきた韓国には最先端というイメージがある」という答えが返ってきた。

 シンポジウムに参加した立教大1年の筑波まりもさんは小学校3年生のころ、東方神起のファンだった母親の影響で韓流に触れるようになった。ドラマを通じて見た隣国には日本のコンビニがあり、日本の食事や製品が当たり前のように映っていた。

 ドラえもんが出てくることもあって「日本の文化が受け入れられている」と知り、遠いイメージを持っていた「外国」を身近に感じるようになった。一方で、ドラマで観ているだけでも「思ったことをズバズバと口にしたり、人との距離感が近かったり、日本と似てるようで似てないんだな」とも思ったという。

 転機となったのは小学校6年生の夏休み中に、李明博(イミョンバク)大統領が竹島に上陸したことだ。

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