日本の若者が「それでも」韓流に熱狂するワケ――中高年が理解できない深層心理誤解だらけの日韓関係を問う(5/5 ページ)

» 2020年02月17日 07時00分 公開
[澤田克己ITmedia]
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メディアや大人の「嫌韓」への疑念

 テレビでは韓国の悪口ばかり流れ、同級生からも「韓国なんて悪い国をなんで好きなの」と言われた。

 母親と一緒にソウルを旅行してみると親切にしてくれる人ばかりで、ドラマを観ても一方的に日本を嫌いと言っているわけじゃないと感じたけれど、「韓国の文化を好き」とは言いづらくなった。ネットで悪口を書いている人がいるのを見ていたから、大人の前では「この人も本当は韓国嫌いなんじゃないか」と顔色をうかがうようになってしまった。

 それでもメディアや大人たちの話は一方的だと感じ、韓国側の言い分も知りたいと思ったという。大学生になる頃には韓国語を読めるようになって、自分で確かめたい。そう考えて中学2年生の時から自宅近くの韓国語教室に通った。

 その甲斐あって大学では韓国語の上級クラスに入った。「上級クラスにいる学生たちは単純にK‐POP好きとかではなくて、文学やメディアなどにも関心を広げている」という。

 筑波さんは第3次韓流ブームについて、「第2次ブームの時に乗れなかった子も第3次では乗ってきた感じ。中学校の時に『韓国なんて大嫌い』と言ってた子が、久しぶりに会ったらバンタン(防弾少年団の略称である「防弾」の韓国語読み)のファンになってて驚いた。第2次の頃の韓流にはまだマイナーという感じがあったけれど、今はもう当たり前のジャンルになった感じ」と話す。

 さらに、日韓の政治的対立について「お互いが感情的になりすぎてこじれてる。私も、政治的な話では韓国の主張がおかしいと思う点があるけれど、それと文化は別のもの。政治的な対立が原因で民間交流を中止するなんて馬鹿らしい話で、政治に振り回されすぎだと思う」と話していた。

 「観光は平和へのパスポート」という言葉がある。国連が1967年を国際観光年に指定した際に制定したスローガンだ。大学で観光について学ぶ筑波さんは、この言葉を引きながら「実際に行き来することで誤解や偏見をなくすことができるんです」と力説するのだった。

著者プロフィール

澤田克己(さわだ かつみ)

毎日新聞外信部長。1967年埼玉県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。在学中、延世大学(ソウル)で韓国語を学ぶ。1991年毎日新聞社入社。政治部などを経てソウル特派員を計8年半、ジュネーブ特派員を4年務める。2018年より現職。著書に『韓国「反日」の真相』(文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)など多数。


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