武漢の集合住宅エリアで4万世帯が参加しての大食事会が感染拡大に拍車を掛けた報道がなされたが、ここで中国での大人数での宴席についていくつか知識が求められる。
中国では何事によらず対人関係が物を言うので、食事に関しても気遣いを怠らぬようしなければならない。これは権力とて例外ではなく、歴史的な事例を出せば、中華民国初代正式大総統にして、事実上の独裁権力を手中にした袁世凱(えんせいがい)にしてもそうだった。
袁世凱は天津の別邸に滞在中、狭い通りを挟んで向かいに屋敷を構える、片腕と頼む将軍への気遣いを絶やさず、自分の食卓にその将軍の好物が出てくると、同じ料理を将軍のもとに届けさせるのを常としていていた。また、将軍と同じ卓を囲んだときには、自ら料理を取り分ける労を惜しまなかった。暴力だけで独裁権力を維持することは不可能だったのである。
おごられる側に拒む権利はなく、目上からの贈り物であれば、とにかくありがたく受け取らなければならない。食べ物であればそれが何であれ、ありがたく口にするのが礼儀で、それをしなければ人間関係に齟齬(そご)をきたすのは必定であった。
現在の中国の食卓についていえば、会食は昼間であっても酒を伴うことがある。最近ではワインやウイスキーも飲まれるが、あくまで中国産の酒でいくのであれば、出されるのはビール、紹興酒、白酒(バイジョウ。アルコール度数の高い蒸留酒。高粱酒ともいう)になる。
ビールのアルコール度数は3パーセント台だから、日本のものよりは酔いにくい。紹興酒のそれは15から16度くらいだから、日本酒と同じくらいだ。問題は白酒で、弱いものでは30度前後、一番強いものだと70度以上になる。
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