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» 2020年03月04日 07時00分 公開

資産運用会社も無料化チキンレース? まだ残る3つの収益源 (1/2)

株式売買手数料だけでなく、投資信託でも進むコストゼロ化。日本資産運用基盤グループの大原啓一社長は、「戦略性がなく、顧客の課題を解決する意識も欠如している。チキンレースではないか」と評する。無料化の流れの中、アセットマネジメントビジネスに残る、3つの収益源とは?

[斎藤健二,ITmedia]

 株式売買手数料だけでなく、投資信託といったアセットマネジメント業界でも無料化が進み始めた。10年間の信託報酬ゼロを打ち出した「野村スリーゼロ投信」や、成功報酬型を取った農林中金の「おおぶねグローバル」などだ(3月2日の記事参照)。

 しかし、日本資産運用基盤グループの大原啓一社長はこのような動きについて、「戦略性がなく、顧客の課題を解決する意識も欠如している。チキンレースではないか」と評する。

 手数料ゼロ化が最初に始まった米国は、1975年に手数料が自由化され、90年代半ばにネット証券が台頭。現在に至るまで40年以上をかけてきている。一方で、日本で手数料が自由化されたのは99年。同時期にネット証券各社が誕生しており、まだ20年しか経っていない。収益源の多角化などを進め、満を持して無料化に踏み切った米国と違い、準備が整わないまま日本では無料化のボタンを押してしまったのではないかという考えだ。

 「だんだん無理がくる。利益が減り、システム投資のコストが捻出できなかったり、優秀な人材が採用できなくなったりする。このままだと継続できないだろう」(大原氏)

 米国の運用会社は、信託報酬ゼロを打ち出したフィデリティの例もあるが、別の収益源を確保した上での戦略だ。「(大手運用会社の)ブラックロックはリスクマネジメントシステムのアラディンを売っているし、フィデリティも他の運用会社へプラットフォームを提供している。日本とは違い、預かり資産をレンディング(貸株)したら収入の一部が運用会社に入るというのも違う」(大原氏)

(写真提供:ゲッティイメージズ)

資産運用で最後に残る収益源、金融アドバイス

 株式取引というブローカレッジビジネスが手数料無料化の道を歩み、続いて資産運用というアセットマネジメントビジネスも無料化の波に飲み込まれる。残る収益の源は、金融アドバイスしかないというのが大原氏の見立てだ。

 米国では、金融アドバイスが利用者のリターンをどのくらい押し上げるかの評価が進んでいる。2016年にメリルリンチがまとめた、金融アドバイスの推計価値では年平均でリターンを1.5〜4%押し上げる効果があるとしている。

メリルリンチのレポートをもとに三菱UFJ国際投信が作成した、金融アドバイスの推計価値

 ただし、その中身を見ると、各人の合わせた最適なポートフォリオを作成する「アセット・アロケーション」や「リバランス」の効果よりも、「投資行動コーチング」などの比率が高いことが分かる。これは、「投資家は、短期的な相場動向でバタバタと売買するなど、非合理的な行動をしがち。『合理的な行動はこうだよ』とアドバイスするもの」(大原氏)だ。

 さらに「ゴール最適化」では、投資家と話し合って人生のゴールを確認し、定期的にその達成状況をチェックするというアドバイスだ。

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