しかし、外国人観光客の多くを失ったダメージは大きいのも事実だ。例えば京都の宿であるなら、桜や紅葉の時期などハイシーズンには宿泊料金が上がるのが通例である。しかし、このままの状況が桜の季節まで続くのであれば、満室といわずとも日本人客で空室がそれなりに埋まったとしても、例年ほどには高い価格設定にできない。「やはり大幅な減収は免れないだろう」と、先述の旅館マネジャーは話す。
さらに「日本人観光客が来てくれるので何とか助かりましたね」と水を向けた僕に対して、ある「錦のおばちゃん」が教えてくれた。
「でもねえ、若い人ばっかりでしょう?」
確かに、通りを歩いている人が若い。錦市場を歩いている人々の様子をよく見てみると、外国人観光客が減り日本人観光客の割合が増えたというだけではない。日本人観光客のなかでも比較的若い人々が多く、中高年、とくに高齢者の日本人観光客の姿がいつもに比べて少ないのだ。
今回の新型コロナウイルスの感染においては、特に高齢者に症状が重篤化するリスクが高いことが知られている。さらに「不要不急の外出は控えて」と政府から要請されるような今の状況下では、観光地から高齢者の姿が消えるのも無理はない。
そして、おばちゃんは「若い人はお金使ってくれへんからねえ…」と付け加えた。日本人客が京都に帰ってきているといっても、「爆買い」で知られた中国人客ほどにお金を使うことはない。
例えば京都市が2019年7月に発表した観光総合調査によると、京都市を訪れる外国人客1人当たりの観光消費額は平均4万6294円だった。それに対して日本人客は平均2万931円。実に倍以上の開きがあるのだ。そして日本人客のなかでも「若い人」は輪をかけてお金を使わないのだという。確かに昨今の日本の若者の苦しい金銭事情を思うと、さもありなん、である。
たとえ同じように観光客がいたとしても、「誰が来ているのか」によって「どれだけお金を落とすか」には大きな差がある。閑散とした他の観光スポットよりはなんとか賑わいを保っているように見える錦市場も、実際には目に見える以上のダメージがあるようだ。
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