コロナショック、安全資産のはずだった債券はなぜ下落したのか?(2/3 ページ)

» 2020年03月17日 07時05分 公開
[斎藤健二ITmedia]

節目が変わった3月9日 きっかけは原油価格急落と欧州コロナ拡大

 これが一転したのが3月9日だ。木村氏は、背景には2つの要素があったと言う。

 一つは原油価格の急落だ。3月6日の産油国会合で、ロシアが減産を拒否。一方でサウジアラビアが増産に踏み切った。これにより、WTIの原油先物価格は30ドルを割り込むところまで下落した。

 「(米国の産油企業である)シェールオイル企業の損益分岐は50ドルだと見られており、原油価格が急落したことで、シェールオイル企業のデフォルト(債務不履行)懸念につながった。シェールオイル企業は、ハイイールド債で大きな位置を占めている。そのため、ハイイールド社債市場ではスプレッドが拡大。金融市場全体でリスクオフが加速した」(木村氏)

 もう一つは、新型コロナウイルス拡大の中心が欧州に移ったことだ。3月9日を転機にイタリアでの感染が急拡大した。「欧米の金融市場関係者の間では、当初は遠いアジアの出来事だった。冷静にいられたが、イタリアを発端に急速に感染が拡大していく中で、身近な切迫した問題になった。これがリスク資産を売却してキャッシュにする動きにつながった」(木村氏)

3月9日からイタリアの感染者数は急拡大した(外務省資料より)

 新型コロナウイルスの影響で、欧米の金融機関でもリモートワークの動きが高まっており、自宅などオフィス外からトレードをしなくてはいけないところも出てきているという。「オペレーティング上のエラーへの対処から、流動性が低下したり、持っていた資産を減らす動きにもつながっていると聞く」(木村氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.