コロナショック、安全資産のはずだった債券はなぜ下落したのか?(3/3 ページ)

» 2020年03月17日 07時05分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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キャッシュ・イズ・キングの時期

 国債についても、イタリアや新興国はともかく、日米の国債が安全資産であることには変わりない。しかし、国債価格までが乱高下する中で、「資産を問わずに、リスクを落としておきたい。価格変動リスクを避けておきたいという思いが強まった。キャッシュ・イズ・キング。いったんはドルのキャッシュを持っておこうというインセンティブが働いている」と木村氏は分析する。

 為替も、9日をピークにドル円は101円台まで円高が進んだが、そこからドルが強さを増した。同様に、金(ゴールド)価格も、9日に1トロイオンス1700ドルを付けたのを天井として、下落した。このように、従来から安全資産といわれた円や金も、9日から反転して売り込まれている。

実体経済の危機から金融危機につながるか?

 原油価格急落から米シェールオイル企業のデフォルト懸念につながった。「短期の信用リスクを示す指標が急拡大している。投資家が資産をキャッシュに変えようという動きが拡大していることを示している」と木村氏。コロナショックが、実体経済の問題から金融危機につながらないよう、中央銀行は懸命だ。

 「FRB(米連邦準備制度理事会)は、1%利下げと資産買い入れの再開を発表している。FRBは注視しているというメッセージを発し、企業の資金繰りを支える意思を明確にしている。短期の資金繰りが詰まると、企業のデフォルトリスクが高まるからだ」

 国内でも、金融危機のリスクはある。例えば、長引く低金利の中で株式を購入していた地銀だ。「株価下落の損失を埋めるために、含み益のある国債を売らなければならなくなっている。そういった売り圧力もある」(木村氏)。

 さらに、信金などが大量に購入していると伝えられるCLO(ローン担保証券)も、貸付先がデフォルトすると焦げ付くリスクがある。「ハイイールド市場がこれだけ悪化していると、それを証券化したCLOも傷んでくる」と木村氏。

 現在の混乱状況を木村氏は、「一番近いのはリーマンショックのときだ。金融政策が矢継ぎ早に出るが、決定打にならない」と評する。ただし、金融危機のリスクが出てきたとはいっても、リーマンショックの際の経験が生かせるかもしれない。

 「打てる手段は当時よりも少なくなっているが、リーマンショックの経験がある分、中央銀行は迅速に行動に移せるだろう」(木村氏)

 各国の中央銀行は協調してドル資金の供給強化に乗り出す方針だ。実体経済への影響も拡大するなか、金融危機という最悪の事態を回避できるか。引き続き、対応が注目される。

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