「銀行API開放は、21世紀のATMである」 目処ついた参照系、不透明な更新系(2/2 ページ)

» 2020年04月16日 15時05分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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5月末を期限として進む「参照系API」

 政府のKPIでいう「6月までに80行以上」が対応した銀行APIは、「参照系API」という。ATMの機能でいえば、残高照会や通帳記帳に当たるものだ。フィンテック側のプレーヤーでいうと、個人向けのマネーフォワードやマネーツリー、法人向けのfreeeなどが、この参照系APIを利用して、家計簿サービスや法人帳簿記入サービスを提供する。

 5月末までに、という期限については、ほぼ達成できそうだと、フィンテック側の各社は話す。「前向きに一緒にやっていこうと 多くの銀行に同意いただいている」(freeeの小村充広執行役員)や、「98%の銀行と接続するという目標を持っている。ほぼ全てと接続できると思っている。ほとんどの銀行が前向き、協力的だ」(マネーツリーのマーク・マグダット常務取締役)(2月25日の記事参照

 一方で、APIの利用料金については銀行間でも温度差がある。GMOあおぞらネット銀行のように完全に無料で提供する銀行がある一方で、相当な金額を提示する銀行もあるようだ。「手数料については、折り合えないというか、Win-Winを見いだせなかった銀行もある」とマネーフォワードの瀧氏は話す。

 マネーツリーのマグダット氏は、「APIがフィンテックイノベーションの土台。価格交渉が、このあとも続くようなら進展に課題がある」と懸念する。

電子決済等代行業者協会の代表理事を務める、マネーフォワード取締役の瀧俊雄氏(電子決済等代行業者協会およびFintech協会共催のオンラインセミナーより)

先が見えない「更新系API」

 料金はともかく、接続の目処は見えた参照系API。しかし、より根本的なイノベーションを生み出すと期待される更新系APIについては、まだ混沌(こんとん)としている。

 更新系APIは、ATMでいえば振り込み機能だ。普通預金口座に入っているお金を投資信託に動かしたり、他の口座に振り込みをすることが、ネットを介して別のサービスから可能になる。

 ECサイトで買い物をするときも、銀行振込かクレジットカードかの選択肢があれば、クレジットカードを使う人のほうが一般的だろう。これは根本的には、振り込みの手続きが面倒だからだ。更新系APIが整備され、ECサイトなどが実装すれば、こんな状況も一変する。企業の経費精算実務でも、精算管理自体はさまざまなクラウドサービスが登場していきているが、最終的な清算金の振り込みは、別途オンラインバンキングサービスにログインして、登録をしていく必要がある。これも、更新系APIが実装されれば、経費精算サービス自体から振り込み手続きが完了する。

 「メガバンクでも、みずほ銀行と三井住友銀行は整備済みだが、ほかは検討中。参照系APIとは温度感は違う。更新系APIの策定状況もアップデートされているが、数としてはまだまだこれから。必ずしも各銀行の開発計画に乗っていない」と瀧氏。更新系のAPIが安価な手数料で提供されれば、さらにキャッシュレス化も進むと見るが、なかなか温度感はそろわない。

 マネーツリーのマグダット氏も「更新系は、データのフォーマット標準化も進んでおらず、個別個別。時間がかかるのではないか」と、見通しは不透明だと話した。

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