自分の銀行口座などから情報を取得して、まとめて閲覧を可能にする家計簿アプリ。これを実現しているのが銀行APIだ。正確には、APIの利用のほか、銀行のWebサイトを表示して内容を取得する、スクレイピングという技術が使われている。
2018年6月に施行された改正銀行法によって、銀行を中心とした各金融機関にはオープンAPIの努力義務が課された。そして、このAPIを使ったサービス連携の契約締結期限は20年5月末とされた。つまり、従来スクレイピングで情報を取得していた家計簿アプリは、6月から各銀行と契約を結び、APIを使うことが必要になる。
ところが、この進捗(しんちょく)状況は思わしくない。19年11月の金融庁の発表によると、契約締結済みの銀行は約40%の57行、契約交渉中を含めると約90%の122行。80%という目標には大きく届いていない。
そもそもの銀行APIの狙いは何だったのか。現在何が起きているのか。各金融機関から情報を取得し、集約して提供するMT LINKというサービスを提供しているマネーツリーのマーク・マグダット常務取締役に現状を聞いた。
マグダット氏 マネーツリーでは、アカウントアグリゲーションと呼ばれる、複数の口座の情報を取得して、ひとつの画面で表示するサービスを2013年からやっています。それを実現するために、Webサイトにユーザーの代わりにログインして取得するのがスクレイピングです。
このときユーザーのIDとパスワードを取得してログインしなくてはなりません。しかし銀行やクレジットカードのサービス提供者から見ると、そうした情報を大量に第3者に持たれているのがセキュリティ的にどうか、という観点があります。
同時に、15年頃にFinTechというキーワードが盛り上がりました。なぜアカウントアグリゲーションをやっているかというと、便利で新しいサービスを提供できるというイノベーションが起こせるからです。
このオープンイノベーションの観点と、セキュリティを高める観点で、オープンAPIを作ろうという話になりました。業界全体で金融庁と話し、銀行法改正に向けて動いてきました。
欧州EUにはPSD2(欧州決済サービス指令:EU Payment Services Directive II)という法令があり、それに似たことが日本の銀行法改正にも書かれています。銀行からデータを取得するAPI(参照系)と、取引させるAPI(更新系)が用意されます。イノベーションの観点から、早めに登録制の枠を作って、利用者保護の観点で政府が応援したいというのが法改正の背景でした。
この法律は18年に施行され、20年の5月末に2年間の猶予期間が終わります。
技術的な話ですが、手法は問いません。スクレイピングのままでいいですよ、と金融機関がいえば契約さえ交わせばかまいません。ただし、オープンイノベーションに向けて基盤を用意しなければいけないと思っている銀行もたくさんあるし、セキュリティ観点からもちゃんとやろうという銀行もたくさんあります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング