「マスク狂騒曲」が教える商魂たくましい調達能力 「買い占め・転売問題」から考える中国ビジネスのリスク新型肺炎が教える中国ビジネスのリスク(3)(2/4 ページ)

» 2020年04月16日 10時00分 公開
[島崎晋ITmedia]

「逆切れ」でけん制 暴力事件に発展

 転売目的の買い占め自体は日本人にも見かけるが、中国人の場合、買い占めの量と違反を注意されたときの「逆切れ」具合が、日本人の比ではないのが特徴だ。例えば、2018年3月9日の渋谷で起きたスニーカー暴行事件がある。

 レアなスニーカーを巡ってはもともと転売が絶えないため、「Supreme(シュプリーム)× NIKE×NBA」のコラボスニーカーの販売開始を翌日に控えた店側では、顧客に対してコアなファンであることを証明するドレス・コードを設けていた。

 ところが、行列の中に基準を満たさない人たちがいたため、警備員が列から外れるよう勧告したところ、複数の中国人から暴行を受けたのである。その模様が動画でアップされたために、報道より前に広く知られることとなった。

 ひと昔前の中国では口論は激しくとも、暴力に発展することは極めて稀(まれ)だったので、比較的若い層の特徴といえるかもしれない。転売すれば日本円にして700万円の利益が見込めたというから、見境(みさかい)がなくなったようだが、利益を得るためには暴力も辞さないというのは、平均的な日本人の感覚では理解しがたい。

 それよりもはるかに大きな顰蹙(ひんしゅく)を買ったのが、同年4月に京都高島屋で起きた人形買い占め事件だった。売りに出されたのは1体12万4200円もするスーパードルフィーという種類のもの。限定100体の販売で、1人2体までとされていた。整理券の配布当日、およそ200人が列をなし、整理券を手にできたのは先着50人だった。

 問題が発覚したのは、支払いの段階で、50人が各2体、計100体分の支払いが1人の中国人の手で行なわれていたからである。その50人は金をもらって並んだことを認め、それからすぐに中国の通販サイトに同商品がアップされたことから、中国人による転売目的の買い占めの見方が強まり、コアなファンはもちろん、同商品にまったく関心のない日本人からも大きな顰蹙を買ったのだった。

 利益を得るためには手段を選ばず――。こうしたアンフェアな行為に平気で走るということを、中国とのビジネスを考える日本人は肝に銘じておかねばならないだろう。

photo スーパードルフィー(ボークス社のWebサイトより)

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