「マスク狂騒曲」が教える商魂たくましい調達能力 「買い占め・転売問題」から考える中国ビジネスのリスク新型肺炎が教える中国ビジネスのリスク(3)(1/4 ページ)

» 2020年04月16日 10時00分 公開
[島崎晋ITmedia]

 新型コロナウイルスの感染拡大は私たちの生活を根底から変えた。中国発の肺炎は瞬く間に世界へと拡大し、私たち日本人は「中国リスク」を痛感させられている。

 今回の感染拡大はさまざまな問題を引き起こしているが、その1つにマスクなどに見られる買い占め・品薄状態が挙げられる。店頭で行列に並んでもなかなか購入できない日常がよく報じられる。だが、実は、日本人がここまでの感染拡大の事態を予測せず、商品もまだ欠品していなかったころ、すでに一部の中国人は今回の事態を見越して、買い占める者がいたのである。なぜ中国人はいち早くこのような行動をとることができたのか?

 歴史家の島崎晋氏は、最新刊『覇権の歴史を見れば、世界がわかる』(ウェッジ刊)で、新型コロナウイルス感染拡大以前の根本的な問題、中国の文化的・歴史的背景が、今でもビジネスなどへ影響を及ぼしている点に言及している。

 前回に続き新型コロナウイルスがもたらすリスクについて取り上げる本連載では、マスクの買い占め、行列の光景をテーマに、中国との付き合い方を考えていく。

photo コロナウイルスの流行で、ドラッグストアでマスクを購入するために並んでいる中国・上海の住民(以下写真提供:ゲッティイメージズ)

マスク、トイレットペーパー 中国人の買い占め・転売に驚愕

 今回の新型コロナウイルスの感染拡大により、店頭からマスクの在庫が逼迫(ひっぱく)し、トイレットペーパーも品薄とのうわさが拡散された結果、多くの日本人が行列に並んで買い求める姿が報じられている。一方で、わずかに報じられているのが、在日中国人による転売の実態である。

 彼らの多くは溢(あふ)れる情報のなかから、正確なもの、金になるものを的確に選び取ることに長けている。日本人がマスクやトイレットペーパーなどを求めて行列をする前に、つまり品薄・欠品になる前に、これらの事態を想定して、すでに買い占めていた者が多かったからだ。あらためて彼らの情報収集力や分析力には驚かされる事態となった。

 筆者は1月に、用事があってゆうちょ銀行に赴いたところ、過去に例のない大混雑の様相だった。多くの中国人が段ボール箱を脇に、カウンター前で呼ばれるのを待っていた。箱ごと購入したマスクをどこかへ送るようだった。

 付近にはドラッグストアが何店舗もあるから、誰が音頭を取るわけでもなく、買い占めに走ったのだろう。案の定、その日はどこのドラッグストアへ行っても、マスクは売り切れ。翌日も、翌々日も同じであった。

 故郷の家族が心配で送ったのか、転売目的だったのかは分からないが、その後の報道から察するに、転売により莫大な利益を手にした中国人が多くいたことは明らかである。個数制限のある商品の買い物では、並び直してでも複数購入しようとする者が必ずいる。商機と見るや、いち早く行動に出た者だけが、いい目を見たのである。

 また、報道によると、中国人のグループがマスクを求めて店頭に開店前から並び、買い終わると、すぐまた近隣の店へ並びなおすことがあったようだ。お店のなかに中国人スタッフがいて、事前に入荷情報を聞かされた中国人グループが店頭に並んでいるというのだ。これなら、いつ、どこかで確実に手に入るのかが分かるわけで、転売目的であることは明らかであろう。

photo 日本人がマスクやトイレットペーパーを求めて行列をする前に、事態を想定して、中国人はすでに買い占めていたのか(写真提供:ゲッティイメージズ)
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