「保険料を払うことで誰かを助けられる」 わりかん保険の透明性が導く本質(1/2 ページ)

» 2020年04月27日 07時20分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 「自分が払った保険料で、(がんにかかった)その人を助けられる。その詳細が分かることで、払ったお金が誰かのためになっていると実感できます」

 保険スタートアップのjustInCaseが提供するがん保険「わりかん保険」について、加入者の一人(20代女性)は、こう話した。わりかん保険は、加入者の間で誰かががんになったときだけ、その人に払う保険金を、みんなで“わりかん”して支払う、新しい形の保険だ。中国や欧米では、P2P保険として、急速に加入者を増やしている。

 いくつかの特徴があるなかで、保険の本質に迫る点が、保険の原点である「助け合い」をテクノロジーの力で蘇らせたところだろう。自分の払っている保険料が、がんで困っている誰かに渡されて役に立っている。それを実感できるように、もし誰かががんになったら、性別、年齢、どんながんだったのかを、加入者に連絡する仕組みを用意している。

がんになった人数によって保険料が決まる。そのとき、どんな人ががんになったのか、概要を知ることができる(画面はサンプル)

 こんな助け合いの考え方が共感されるのは、マーケティングとセールスで固められ巨大化した既存の保険商品に対する不信感も背景にある。

 「“みんなで助け合う”に共感を持っている。既存の保険商品では、加入者が増えているのか、自分以外にいるのか、誰がいるのか、それが分からなかった。保険金が活用されている実感がない」と、別の加入者(20代女性)は話す。

 既存の保険では、保険料は保険会社に支払うものであり、それがどのように病気などで困っている人に渡っているのかは、知りようがない仕組みだ。もともとは助け合いだった保険が、高度化し企業活動となる中で、助けている相手の顔が全く見えないものに変わっていった。

 40代男性のある加入者は、わりかん保険の魅力をこう話した。「保険は本来、マンション管理費のように、みんなで払ってみんなのために使うもの。なぜか保険の場合、そういう商品はなくて、何にどう使われたかは一切オープンにならない。そこに不満があった。わりかん保険の場合、自分のためではなく人のために払う。そこがいい」

 

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