日本は先進国だ。先進国では「貧乏人は死ね」という制度設計にはなっていない。本当に最後の最後、どうにもならなくなったら、破産して生活保護をもらう手がある。それが可能な制度設計になっているし、卑怯な手でも何でもない。われわれが今まで払ってきた税金で作り上げられた制度だ。
しかし、そういう制度が完備されているにもかかわらず、毎年多くの人が経済的理由で自殺してしまう。それは、制度を悪用する人をブロックする仕組みに、本当に必要な人までが引っかかって、制度が利用できなくなったり、役所の窓口で冷たくあしらわれた話が世の中に出回って、自分も救われないと絶望してしまったりするからだ。
あるいは、裁量権を持った相手を、拝み倒したり説得したりして、自分が正当な制度利用者であることを説明することに、著しく自尊心が傷ついてしまう。まともな人格であればあるほど、自分自身が生活保護をもらうために、頑張ることはできないし、さまざまな障壁に立ち向かえない。
しかし、そもそも今回の経済問題は、個人の失敗ではない。コロナはこの世界に襲い掛かった危機であり、経営者の責任だけだと受け止める必要はない。これは人類全体の災厄なのだ。あなたが恥じる理由はどこにもない。
筆者は一応文章で生計を立てているけれど、それでも精神的に追い詰められた状態で、いわゆるお役所言葉まみれの申告手続きの説明を読むのは無理だ。ただでさえ悲観的な考えに支配されている中で、支給の条件とか、必要な資料とかを読んでいると、どうしたって「何だかダメそうだなぁ」という気分にしかならないし、窓口で厳しく却下されるイメージしか湧かない。事業そのものが行き詰まっている中で、残りわずかなやる気を振り絞って、わざわざ辱めを受けに行きたくないと諦めてしまう気持ちはよく分かる。いろんなことに立ち向かうエネルギーが枯渇しているからだ。それより差し迫る支払いをどうするかの方が、喫緊の問題に思えてくる。
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