コロナ禍での支払いの優先順位集中連載 新型コロナで経済死しないための方法 (2/4 ページ)

» 2020年05月28日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

負債の増加と一時的な事業中止

 事業が行き詰まるケースの2つ目は、もうどうにもならないほど、負債が膨らんでしまったケースだろう。この場合は、迷っていないで破産を選ぶべきだ。破産という言葉は大変恐ろしい響きだが、そもそもは絶望から負債者を救うための制度だ。膨大な債務を「一生かけて払え」ということでは、人は生きる意思を失ってしまう。だから、債務を減殺して、現実的な人生が営めるようにする仕組みである。

 本当にどうしようもなければ、億単位の負債だって、減免の末「毎月1万円を支払います」みたいな着地の仕方もある。当事者同士で話し合いができなければ、裁判所が話し合いを手伝ってくれる。少なくとも自殺を考えるくらいなら破産を選ぶべきだ。

 債務者の自殺は、債権者にだって一生心の負担になるのだ。続編で説明するが、いまや、こういう債権回収の場にやくざものが出てくることは絶対にない。「内臓売って払えや!」みたいな話には決してならないし、万が一そんなことを言う人がいたら、すぐ逮捕してもらえる世の中になったのだ。

 経産省にも、中小企業庁にも、商工会議所にも、県や市にも相談窓口はたくさんある。経営に行き詰まった経営者が救済される制度は十分用意されている。

 勘違いしやすいが、それらは決して申請書の提出窓口ではなくて、経営者自身が解決方法を捻り出さずとも、行き詰まった状態そのものを相談に行ける場になっている。

 助けてくれる制度もあるし、助けてくれる人もいる。だからあなたが「助けてくれ」と手を挙げさえすれば、自分で生き残りの道を考えなくても、助かる道をサポートしてくれる。プライドが邪魔してそこにたどり着かないとどうにもならないだけだ。

 ひとつ知っていたほうが良いことがある。事業が行き詰まると、零細企業経営者の仕事は、8割方資金繰りになる。経験した立場で言うと、これは本当にキツい。けれども、起業するような人が本当に得意なのは資金調達ではない。新しいビジネスを生み出し、それを形にしていくことこそが起業家の才能であり、それができるから起業したのだ。

 そういう人が、不得意な資金繰りにほとんど全てのリソースを食われている状態でいい結果が出るとは思えない。だから何としても資金繰りを切り離して、事業と自分の未来を考えられる形を作るのだ。ましてや公的制度でそういう部分を担ってくれるのであれば、利用しない手はない。冷静に考えれば、大手企業なら資金繰りは財務担当の仕事なのだから、社長自身がそれをやらないことは別に変わったことでもなんでもない。

 3つ目、最後のケースは、元々上手く回っていた事業が、一連の自粛などによって一時的に立ち行かなくなっているケースだ。個人向けの「特別定額給付金」10万円と、最大200万円の「持続化給付金」だけでは、この状況を越えられないとすれば、銀行から、実質無利子、無担保、返済据置最大5年、保証料減免という特別条件で融資を受ける緊急制度もできている。

 これは各都道府県の信用保証協会に保証を申し込み、保証の承諾を受けることで、民間金融機関から最大で2億8000万円までの融資支援を受けられる制度だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.