日経平均株価の反転攻勢が止まらない。6月3日の日経平均株価は2万2613円と、コロナ前の水準まで回復した。しかし、足元の景気動向は、コロナ前と同じレベルまで回復しているとはとても言い難い。
現に、足元では景気動向指数の悪化が顕著に表れている。内閣府が5月25日に公表した景気動向指数の速報値によれば、景気に先行して反映される「CI先行指数」の最新値は、異例の下げ幅である前月比-8.1ポイントで、指数の値は83.8となった。
景気動向指数は2018年ごろから悪化している
景気動向指数はそもそも2018年頃から悪化しているが、今回のコロナ禍中で一層悪化したかたちになる。その一方で、日経平均株価については、足元の勢いが継続すればコロナ前を大きく上回る株価水準となる可能性もある。
仮に、現在の株価水準が実体経済とかけ離れているとすれば、アフターコロナの市場環境がバブルになるといううわさにも信ぴょう性が出てきそうだ。それでは、なぜ足元の株価が大きく上昇しているのだろうか。その背景には、コロナ禍中の緊急的な金融政策の存在が大きいと考えられる。
アフターコロナ相場がバブルになるとにらむ側の論拠の一つとして、「コロナ禍が早期に終息すれば、経済的影響は軽微であるから株価は戻るだろう。その一方で、コロナ禍が長期化すると、政府や中央銀行は追加で緩和的な政策を展開する可能性が高い」というものがある。つまりコロナ禍の行く末いかんを問わず、株価にポジティブな事象が発生する可能性が高いという点で、市場参加者が買いに戻ってくるとみているようだ。
これに加え、仮に各国の金融政策がオーバーリアクションであれば、アフターコロナが本当にバブル化してもおかしくないだろう。つまり、実質的な経済影響と比較して、各国の金融・財政が過剰に緩和的な政策を行っているとすれば、そのギャップだけ実体経済とかけ離れた株価上昇をもたらす恐れがあるからだ。
- コロナ後の世界 緊急事態から格差縮小へ
財政政策の重要性について、コロナ・ショックの前後で社会の認識が大きく変わる。財政政策を担当する政府と、金融政策を担当する中央銀行の重要性が増すだろう。「コロナ後」の人々は、政府の管理などを以前よりも信頼するようになり、“自由からの逃走”(権力への依存)の傾向が強まるかもしれない。また、GAFAなどと呼ばれるSNSの「プラットフォーマー」たちは、社会的存在意義が増すとみている。
- コロナ・ショックからの回復を支える財政拡大
過去最大級の経済対策を決定した日本では、今後感染拡大防止が奏功した段階で、地域活性化などのアイデアの具体化を含む追加対策が打ち出されることになるだろう。米国では、追加の経済対策が議論され始め、欧州でもEUがルールを一時緩和し、機動的な財政政策が打てるようになった。
- コロナで「減損先送り」が“合法的な粉飾決算”とならないために
コロナショックは、リーマンショックを上回る勢いで、企業の業績悪化を引き起こしているようだ。このような中、コロナショックのダメージを軽減させる措置が検討されている。在の会計ルールをより柔軟に適用することで、資本の目減りを防ぐ「減損会計の見送り」だ。
- 9000億超の赤字 結局、ソフトバンクの経営は本当に危ういのか
ソフトバンクが巨額の企業買収や投資を行う場合、デットファイナンス、つまり借入金によって資金を調達してきた。なぜソフトバンクは年間数千億円にもなる利息を支払いながら、株式ではなく有利子負債によって買収や投資を進めるのだろうか。
- コロナ対策で世界の財政は崩壊しない
政府財政の悪化がどのくらい許されるのか、という問いに、明確な答えは見当たらない。しかし、インフレあるいは期待インフレ率の上昇により、人々の期待もそれに追随する傾向にある。アフター・コロナの時代は、財政政策が重要となり、5〜10年の単位で見れば、再び金利上昇トレンドに転ずる可能性がある。
- 株価の下値めどとシナリオ 米国の8週間程度の活動自粛を織り込む金融市場
仮に、5月10日ごろまで事実上の外出禁止を含む自粛ムードが続いた後、全米でウイルス収束の兆しが見え、2020年7−9月期に主要都市で経済活動が正常化に向かうのであれば、現在の日米株価指数の水準は、今後8週間は中止または延期のシナリオと整合的だと考える。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.