9000億超の赤字 結局、ソフトバンクの経営は本当に危ういのか古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)

» 2020年05月08日 08時23分 公開
[古田拓也ITmedia]

 ソフトバンクグループの業績悪化が止まらない。先週30日には2020年3月期の通期予想を1500億円下方修正し、9000億円の最終赤字とした。

 グループ内では、携帯事業やZホールディングスなどの事業が、合計で9000億円程度の黒字見通しとなる一方で、この2倍の水準である1.8兆円もの損失を計上したのが「ソフトバンクビジョンファンド(SVF)」だ。

ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(4月20日 ロイター)

 SVFを巡っては、これまでに表面化してきた米ウィー・カンパニーや米ウーバー・テクノロジーズといった投資先の企業価値下落問題に加え、新型コロナによる全体市況の後退が追い討ちをかける動きになりそうだ。一部で囁(ささや)かれているように、今回の赤字はソフトバンクの経営危機を本当に示唆しているのだろうか。まずは、これまでのソフトバンクの投資戦略をおさらいしたい。

“借金“で巨大化したソフトバンク

 ソフトバンクが巨額の企業買収や投資を行う場合の癖といえば、「デットファイナンスによる資金調達を好む」点にあるだろう。デットファイナンスとは、借入金によって資金を調達する方式である。ソフトバンクは2000年代初頭から、ボーダフォンや米スプリントなどの買収案件でも、頻繁にデットファイナンスを活用してきた。

 同社は、ボーダフォンの買収額1.7兆円のうちおよそ70%、スプリントでは買収額1.6兆のうち、およそ75%となる1.2兆円をそれぞれ有利子負債で調達した。16年9月にはプロセッサのライセンスビジネスを展開するArm Holdingsを買収額3.3兆円で買収。このうち、約3割となる1兆円を有利子負債でまかなっている。

 ソフトバンクは、大型の買収時には多額の有利子負債を抱え、その度に「博打だ」などと批判されてきた。しかし、蓋を開けてみれば経営が傾くどころか買収を追うごとにグループは巨大化していった。

買収で利益率を高め、有利子負債を圧縮してきた オコスモ作成 買収で利益率を高め、有利子負債を圧縮してきた

 現在、ソフトバンクグループは、2020年3月期第3四半期時点で31兆円程度の株式資産を保有しているが、グループ連結では19兆円程度が有利子負債となっている。有利子負債に対する支払利息は今期の累計で4566億円と決して少なくない金額となっており、携帯事業などにおける収益の半分程度が利息の返済に賄われているというような構図になっている。

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