社長、間違ってます! 米国で広がる「従業員アクティビズム」で会社は変わるか世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)

» 2020年06月11日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

 同社は当時、メキシコとの国境から入国して拘束された不法移民の子供たちを、家族と離れ離れにして収容する施設に家具を納品すると合意した。メキシコ国境沿いの移住希望者の拘束は、ドナルド・トランプ政権が力を入れている不法移民取り締まり強化の一環として行われている。ただ家族で国境を超えてくる移住希望者については、親と未成年の子供たちが別々に収容されるなど人権的に問題視されていた。さらに小さな子供たちがひどい環境に置かれているとの批判があったり、子供用施設の中には劣悪な衛生状況だったために閉鎖されたところもある。

 そんな賛否が議論されている施設に、商売とはいえ家具を納品するとは納得がいかないと、従業員らは声を上げた。まず1万2000人いる従業員のうち、500人が経営陣に販売停止を求める書簡を提出。だが経営側は「法にのっとって相手を選別せずに商品は販売する」と反論した。

 するとマサチューセッツ州の本社前で従業員が経営陣に対してデモを展開する事態になった。それでも経営陣は家具販売を撤回せず、一方でこの顛末(てんまつ)はTwitterや報道で大きな話題になった。同社が評判を大きく落としたことは言うまでもない。

 先に紹介したPR会社のウェーバー・シャンドウィック社は19年3月、米国のさまざまな職種と肩書の人に対して、従業員アクティビズムについて調査を行っている。そこで判明したのは、従業員の71%が「社会に変化をもたらすことができると信じている」と答えており、61%が「企業の経営者側よりも自分たちの方が世界にインパクトを与えることができる」と考えている。特にミレニアル世代(1980年代〜2000年代初頭に生まれた人)に多い傾向があり、ミレニアル世代の従業員の82%は雇用主に対して意見する権利があると答えている。これは他のどの世代よりも多い。

 おそらくその背景には、インターネットやSNSといった情報テクノロジーの進化がある。プライベートで使うTwitterやFacebookで自分たちが持つ違和感や使命感を表明して仲間が集まり、それが活動につながり、自分の会社に対して声を上げやすくなる。そうしたプロセスが大金やコネ、国の制度を使ったりすることなくできてしまうのだ。

TwitterなどのSNSにより、会社に対して声を上げやすくなっている(写真:ロイター)

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