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» 2020年06月18日 16時00分 公開

浦上早苗「中国式ニューエコノミー」:米国との密な連絡、習近平主席の指導 〜数字で読み解く中国の新型コロナ白書(前編) (1/3)

中国政府は6月7日、新型コロナウイルスの初の患者発生から封じ込めまでの取り組みを白書として公表。内容は、米国などの海外からの批判に対し、中国がいかに適切に対応したかをアピールしたもので、時期により5段階に分かれている。ここでは、2020年2月中旬までの最初の2段階を紹介する。

[浦上早苗,ITmedia]

 中国の首都・北京市で2カ月ぶりに新型コロナウイルスの感染者が確認された。6月11日から15日までの5日間で、確定診断を受けたのは106人に上る。いずれも同じ食品市場の関係者で、4月に経済活動を本格化させた北京市は再び厳戒態勢を取っている。

 中国政府は6月7日、武漢での患者発生から封じ込めまでを検証し、取り組みを自賛する「新型コロナウイルスとの戦いにおける中国の行動白書」を公表した。その矢先の首都でのクラスターは何とも間が悪いし、新型コロナウイルスがいかに厄介で、どこから出現するか全く読めないことが改めて浮き彫りとなっている。

中国政府は6月7日、武漢での患者発生から封じ込めまでの取り組みを「新型コロナウイルスとの戦いにおける中国の行動白書」として公表(写真 ロイター)

 同白書は、米国を中心にした海外からの批判に対し、中国がいかに適切に対応したかをアピールする内容になっている。新型コロナが中国で猛威を振るっていた1月から3月初めにかけては、前面に出てくるのは感染症の専門家と各地方政府の責任者ばかりで、中央政府の動きはほとんど見えなかった。しかし同白書は、「習近平国家主席は」という主語があまりに多いので、筆者も途中でげんなりしたほどだ。

 この白書の内容を「事実」と見るか「捏造(ねつぞう)」と見るかは、読者次第だ。しかし、中国企業や国民、専門家と新型コロナの戦いをリアルタイムで追い、新著「新型コロナ VS 中国14億人」にまとめた筆者にとっても、これだけ時系列が細かく記された資料を目にするのは初めてで、一定の資料価値はあると考える。2回に分けて白書の内容を要約する。

 白書によると、中国では5月31日時点で、8万3017人が感染し、そのうち5.6%に相当する4634人が死亡した。白書は中国と新型コロナとの戦いを5段階に分けて振り返っている(もしかしたら、現在北京で起きているクラスターは、第6段階になる可能性もある)。今回は、最初の2段階を紹介する。

第1段階:発生と蔓延(まんえん)(2019年12月27日から2020年1月19日)

2019年12月27日 湖北省中西医結合医院が、武漢市江漢区疾病予防控制中心(CDC)に原因不明の肺炎患者の発生を報告。

12月30日 武漢市衛生健康委員会が、管轄区域の医療機関に「原因不明の肺炎患者の適切な治療に関する緊急通知」を通達。

12月31日 早朝、国家衛生健康委員会は武漢へワーキングチーム、専門家を派遣し、対策を指導するとともに現地調査を実施。武漢市衛生健康委員会は公式サイトで、27人の患者が発生していることを通知し(これが新型コロナウイルスの存在が公表された第1報。筆者注)、「3密」を避けるよう呼びかけた。また、同委員会は法に則って感染症の情報を公表した。

2020年1月1日 国家衛生健康委員会は、感染症対策指導チームを設立。2日に中国疾病予防控制中心(CDC)、中国医学科学院が湖北省から患者4人のウイルスのサンプルを受け取る。

1月3日 武漢市衛生健康委員会は、公式サイトで原因不明の肺炎患者44人の発生を公表。国家衛生健康委員会と湖北省衛生健康委員会は診察・治療のためのガイドラインを策定。世界保健機関(WHO)やマカオ、香港、台湾に自発的に感染症の情報を伝える。

1月4日 中国CDCと米国CDCの責任者が電話を通じ、感染症の状況を説明する。両者は情報交換や技術協力を進めることで合意。国家衛生健康委員会と湖北省衛生健康委員会は「原因不明のウイルス性肺炎の治療に関するハンドブック」を策定。

1月5日 武漢市衛生健康委員会は公式サイトで、原因不明の患者が59人に増えたと発表。SARSやMARS、鳥インフルエンザ、インフルエンザでないことを確認する。中国はWHOに感染症の状況を報告。

1月6日 国家衛生健康委員会は全国会議で、武漢市の原因不明の肺炎に関する情報を報告し、必要な対策を指示する。

1月7日 習近平国家主席が、原因不明の肺炎の感染防止を適切に行うよう指示。中国CDCはウイルス株の分離に成功。

1月8日 国家衛生健康委員会の専門家グループが、ウイルスを「新型コロナ」であると確認。米中CDCは電話で情報共有し、今後の協力について議論する。

1月9日 国家衛生健康委員会の専門家グループは、武漢市で多発している原因不明のウイルス性肺炎の病原体が「新型コロナウイルス」であることを公表。WHOにも通報する。WHOは公式サイトで武漢で発生した肺炎の集団感染について声明を出し、中国が短期間で「新型コロナウイルス」を検出したことを評価する。

1月10日 中国CDC、中国科学院武漢ウイルス研究所などは、初期段階の検査キットを開発。武漢市は患者が収容されている病院で検査を開始する。国家衛生健康委員会、中国CDCの責任者はそれぞれWHOの責任者と感染症対策について情報交換する。

1月11日 この日から、中国は毎日WHOに感染症情報の報告を開始。

1月12日 武漢市衛生健康委員会は、「原因不明のウイルス性肺炎」という表現を「新型コロナウイルスによる肺炎」に改める。中国CDC、中国医学科学院、中国科学院武漢ウイルス研究所は、国家衛生健康委員会の指定機関としてWHOに新型コロナウイルスのゲノム情報を提供。鳥インフルエンザ情報共有の国際推進機構(GISAID)のデータベースで公表し、世界に共有する。

中国で確認された新型コロナ感染者数の推移(白書より)

1月13日 李克強首相は、国務院全体会議で感染症対策を適切に行うよう指示する。また、国家衛生健康委員会も会議を開き、湖北省、武漢市の港湾・駅などでの検温、3密回避など監督管理を強化するよう指導。WHOはタイで新型コロナの患者が出たと発表。香港、マカオ、台湾の調査チームが武漢市で現地調査を実施。

1月14日 国家衛生健康委員会は全国テレビ電話会議を開き、湖北省、武漢市での感染症防止対策を強化していることを紹介し、他の地方も警戒するよう呼びかける。会議では「新型コロナウイルスが大きな不確実性を持った新たな感染症であり、人から人への感染があるかはまだ調査中」と説明。

1月15日 国家衛生健康委員会は「新型コロナウイルスによる肺炎の診療ガイドライン(第1版)」を策定。

1月16日 PCR検査キットが完成。武漢市は69カ所の病院で検査を行えるようになる。

1月17日 国家衛生健康委員会は感染症対策のため7つの監督指導チームを地方に派遣。

1月18日 国家衛生健康委員会は、「新型コロナウイルスによる肺炎の診療ガイドライン(第2版)」を策定。また、ハイレベル専門家グループを組織し、現地調査のため武漢市に派遣する。

1月19日 ハイレベル専門家グループは「人から人への感染が起きている」と判断。

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