内田社長はFCCの黒字化時期について、「2021年度下期」としており、最低でもあと1年半は資金流出が止まらない。新型コロナの蔓延が長期化すれば、さらにFCCの黒字化は遠のく。
では、どうやって営業キャッシュフローを黒字にしていくのか。
決算発表と同時に打ち出した「事業構造改革計画」に盛り込まれたのは「スリム化」だった。現状720万台の生産体制を通常シフトで540万台にまで20%削減するという。そのために、インドネシア工場の閉鎖を正式に決めたほか、スペインのバルセロナ工場の閉鎖方針も明らかにした。インドネシア工場の閉鎖後はタイ工場に集約する。また、バルセロナ工場を閉鎖する一方で、EU(欧州連合)から離脱した英国のサンダーランド工場については維持する方針を明らかにした。
車種も2023年までに69から55に20%削減、新型車の投入を増やし、商品ライフサイクルを短縮、車齢を4年以下にするという。
もちろん、工場を閉めたからと言って、すぐに固定費が減るわけではない。「固定費を3000億円減らす」としているものの、具体策は出ていない。通常こうした構造改革には人員削減が不可欠だが、内田社長は「リストラではない」として、全世界で13万8993人(2019年3月末)いる人員数の削減計画については口をつぐんだ。欧米企業で事業規模を縮小する公表をしながら、人員計画を明らかにしないケースは極めて異例だ。
バルセロナ工場では早速、閉鎖反対を訴えて従業員がタイヤに火をつけ煙を上げるなどデモ行動が発生した。バルセロナの閉鎖には今後、政府や組合との交渉が必要で、退職手当など人員整理のための巨額の費用がかかる見通しだ。全体で2割生産量を減らせば、世界で2万人以上の解雇が必要になる可能性もある。
そうした「厳しい現実」を示せずにいるのだ。
内田社長は「優秀な人材が日産の宝だ」と繰り返した。その一方でリストラで人員を切るとは言えなかったのだろう。内部がなかなか一枚岩にならない中で、求心力を得ていないという不安があるのかもしれない。
社長候補とみられながら副COO(最高執行責任者)にとどまったことで日産を辞め、日本電産に転身した関潤氏は4月1日に同社の社長に就任した。それに続いて、6月1日には日産の上級幹部だった3人が、日本電産の執行役員に就任したことが明らかになった。縮小均衡を目指した途端、日産の求心力が失われ、ボロボロと人が辞めていっているわけだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング