かつてカルロス・ゴーン改革の時には、「ゲンバ(現場)は強い」と言い続けたが、一方で役員一歩手前の部長など日産的な中間管理職はスタスタと切っていった。今、縮小均衡を目指す中で、内田社長が考える「優秀な人材」とは誰を指すのか、幹部社員の多くが見えていない、ということだろう。
世界最大の自動車グループを目指したルノーや三菱自動車とのアライアンスの行方も不透明だ。決算に先立って、それぞれの企業が強みを持つ地域での役割分担を示したが、そうした「緩い連合」でこの先、生き残っていけるのか。
一時期は日産の経営権の完全掌握に動いたルノーも、新型コロナウイルスの蔓延に伴う欧州での販売激減などで、業績悪化が深刻だ。三菱自動車も苦しいままだ。そんな「弱者連合」で世界の市場で生き残っていけるのか。
内田社長はまた、「失敗を認める」「内向き文化を改める」と、これまでの拡大路線に走った日産との決別を口にした。だが、今期の赤字額を6712億円にとどめ、ゴーン改革時の6843億円を超えなかったのは、「史上最悪の赤字」と言われたくなかった「意思」の表れではないのか。リストラが不可欠なのにあたかも人員削減をしないで「規模適正化」ができるような説明に終始したのは、社員たちの反発を恐れた「内向き思考」だったのではないか。
現場の結束が果たせなければ、良い車は生まれないし、販売も伸びない。国内の日産ファンからも「欲しい車がない」といわれて久しい。縮小均衡を目指しながら、どうやって求心力を高めていくか。果たして、この危機を乗り越えられるか。内田社長のリーダーシップが問われている。
磯山 友幸(いそやま・ともゆき)
経済ジャーナリスト。1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年に退社、独立。著書に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)、『「理」と「情」の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP )、『2022年、「働き方」はこうなる 』(PHPビジネス新書)、共著に『破天荒弁護士クボリ伝』(日経BP )などがある。
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