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» 2019年10月07日 05時00分 公開

【新連載】人事ジャーナリスト・溝上憲文の「経営者に告ぐ」:“高齢者版追い出し部屋”だけじゃない 70歳雇用義務化がもたらす「どの世代にも残酷な未来」 (1/4)

ベテラン人事ジャーナリストの溝上憲文が、人事に関する「経営者が対応すべき施策」を提言する新連載。今回は刻々と進む70歳雇用義務化について。この施策の先には、「現役世代の給与に手をつけなければならない」という厳しい現実が……。

[溝上憲文,ITmedia]

 政府を中心に「人生100年時代」が盛んに叫ばれている。言うまでもなくその背景には、生産年齢人口が減少し、社会保障制度の不安定化を防止するために高齢者雇用を拡大したいとの思惑がある。そうした中での9月27日。70歳までの就業機会を確保することを法制化するための具体的議論が厚生労働省の審議会で始まった。

 政府の狙いは65歳までの雇用を義務付けている現行の高年齢者雇用安定法(高齢法)を改正し、雇用の上限を70歳に引き上げることにある。審議会の議論を経て、努力義務を課す改正法案を2020年1月の通常国会に提出する予定だ。

phot 高年齢者雇用安定法を改正する先に政府は定年廃止や70歳までの定年延長などをもくろんでいるとみられるが……(写真提供:ゲッティイメージズ)

 そのシナリオは6月21日に閣議決定された政府の「成長戦略実行計画」に描かれている。その中で、「70歳までの就業機会の確保を円滑に進めるためには、法制についても、二段階に分けて、まず、第一段階の法制の整備を図ることが適切である」としている。

 20年に提出予定の高齢法改正を第一段階として70歳雇用を努力義務とし、さらに第二段階として制度の運用状況を見て、努力義務から義務化に格上げするというものだ。実行計画にも「第二段階として、現行法のような企業名公表による担保(いわゆる義務化)のための法改正を検討する」と明記している。

 第一段階の法改正では企業は65歳以降の選択肢として次の7つから選ぶことができる。(1)定年廃止、(2)70歳までの定年延長、(3)継続雇用導入、(4)他の企業への再就職の実現、(5)個人とのフリーランス契約への資金提供、(6)個人の起業支援、(7)個人の社会貢献活動への資金提供――の7つだ。

 (4)〜(7)の選択肢は、他企業への就職やフリーランスといった非雇用も認めるなど、企業に配慮しているように見えるが、第二段階で同一企業における70歳雇用の義務化を想定していることを考えると、政府の狙いは(1)〜(3)にある。(4)〜(7)はそれまでの猶予的措置と考えるのが妥当だろう。

 現行の65歳雇用確保義務に至る過程でも、まず(1)〜(3)の選択肢を努力義務とし、その後、義務化に踏み切ったことを考えると、その方向性はこれまでの65歳雇用の義務化に向けたステップと同じだ。

 そうなると次に浮上してくるのが定年年齢の引き上げだ。現在の法定定年年齢は60歳であるが、多くの企業は60歳定年で退職後、65歳まで1年契約更新の再雇用制度(継続雇用制度)を導入している。現在の高齢法の65歳雇用確保義務が60歳定年をベースに推進されたことを考えると、70歳雇用の義務化までに定年を65歳に引き上げることも俎上に上がる可能性がある。実際に政府内では70歳雇用確保義務の実施までに65歳定年を実現しておくべきという声もあるらしい。

phot 6月21日に閣議決定された政府の「成長戦略実行計画」。「70歳までの就業機会の確保を円滑に進めるためには、法制についても、二段階に分けて、まず、第一段階の法制の整備を図ることが適切である」「第二段階として、現行法のような企業名公表による担保(いわゆる義務化)のための法改正を検討する」としている
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