#SHIFT

“高齢者版追い出し部屋”だけじゃない 70歳雇用義務化がもたらす「どの世代にも残酷な未来」 【新連載】人事ジャーナリスト・溝上憲文の「経営者に告ぐ」(3/4 ページ)

» 2019年10月07日 05時00分 公開
[溝上憲文ITmedia]

70歳雇用を避けたい企業が取り得る手段

 とくにIT企業にとっては社員の平均年齢が低く、主力は20〜30代である。60歳までの雇用はなんとかなるとしても70歳まで面倒を見るとなると負担も大きい。

 今後、70歳雇用を極力避けたい企業が取り得る手段は以下の3つだろう。

1.現役世代、とくに40〜50代の人件費を削減し、その原資を60歳以上の社員の人件費に充当する

2.60歳到達前に、活躍が期待できない社員を早期退職募集などでリストラする

3.60歳以上の社員を仕事がきつい部署に配置転換し、自主的退職を促す

 じつは3.60歳以上の社員を仕事がきつい部署に配置転換し、自主的退職を促すという措置を採る企業も少なくない。例えばある食品加工メーカーでは、事務・営業部門で働いていた社員を定年後に工場の生産部門で製品の梱包作業に従事させている。会社としては人手不足部門への配置というのが表向きの理由だが、本音は慣れない仕事に嫌気がさし、自ら辞めてもらうことにある。実際に本人も「安い給料でこき使われるのはごめんだ」と言って1〜2年程度で辞めていくという。

 “高齢者版追い出し部屋”のような陰湿な措置だが、とくに狙われるのは現役時代に人事評価の低かった社員だという。

 1.現役世代、とくに40〜50代の人件費を削減し、その原資を60歳以上の社員の人件費に充当する2.60歳到達前に、活躍が期待できない社員を早期退職募集などでリストラする、はまさに現役世代が犠牲を強いられる話だ。60歳から70歳まで定年や雇用確保義務が延長されると、そのための人件費を捻出するため現役世代の賃金が削減される。すでに65歳までの再雇用制度や65歳定年制を実施している企業の中には40代以上の給与を一律に削減し、60歳以上に充当しているところも少なくない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.