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“高齢者版追い出し部屋”だけじゃない 70歳雇用義務化がもたらす「どの世代にも残酷な未来」 【新連載】人事ジャーナリスト・溝上憲文の「経営者に告ぐ」(4/4 ページ)

» 2019年10月07日 05時00分 公開
[溝上憲文ITmedia]
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今以上に現役世代の給与に手をつける可能性も

 社員にとっては従来受け取っていた60歳までの生涯賃金の総額が65歳まで働くことで帳尻が合う計算であり、会社にとって懐(ふところ)はそれほど痛まないことになる。それが今後は70歳雇用義務、65歳定年制になり、さらにバブル期入社組など60歳以上の増加が見込まれる。今以上に現役世代の給与に手をつけてくることが予想される。

 2.60歳到達前に、活躍が期待できない社員を早期退職募集などでリストラするという早期リストラも要注意だ。一般的には解雇するに足る合理的理由がなければ解雇は難しいが、じつは60歳以上の人は雇用確保を義務付けている高齢法によってより解雇することが難しいとされている。例えば60歳以上に限定した「早期退職募集」は困難とされている。

 そうであるなら40〜50歳代にリストラに踏み切る企業も増えるかもしれない。ちなみに東京商工リサーチの2019年「主な上場企業の希望・早期退職者募集状況」調査によると、19年1〜6月の早期退職者数は約8200人。半期だけで18年1年間の4126人の約2倍に達している。この中にはもしかしたら60歳以降の雇用を意図した削減も入っているかもしれない。

 現役世代にとっては60歳以降の雇用が確保されても決して安心というわけではない。今後は賃下げやリストラの脅威に加えて、60歳以降も楽な仕事をさせてもらえないどころか、給与も職務や成果に応じて大きく増減するなどの厳しい試練が待ち受けている可能性がある。

著者プロフィール

溝上憲文(みぞうえ のりふみ)

ジャーナリスト。1958年生まれ。明治大学政治経済学部卒業。月刊誌、週刊誌記者などを経て独立。新聞、雑誌などで経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。『非情の常時リストラ』で日本労働ペンクラブ賞受賞。


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